【重要なお知らせ:当社を装った偽サイトにご注意ください】

サイエンス

2025.03.16 13:00

気が散る、意見を変える、不確実 「一貫性のない脳」の特性こそが創造力の源なのだ

Shutterstock

Shutterstock

たとえば、一度決断したあとにそれを疑い、考えを変え、後になって最初の直感が正しかったと気づいたことはないだろうか。あるいは、仕事のオファーを受けるかどうかで迷ったり、リスクのあるメッセージを送る前に躊躇したり、大きな買い物について考え直したりすることなどはなかっただろうか。

そのようなとき、自分が優柔不断で、散漫で、あるいは非合理的だと感じるかもしれない。私たちはしばしば、気が散ることや意見を変えること、不確実性を抱えることを弱点とみなすよう教えられてきたが、実際には、これらの「ミス」と呼ばれるものこそが、未知の要素に満ちた世界を脳が乗り切るための自然なプロセスの一部なのだ。

完璧な一貫性を求めるのではなく、この精神的な変動を受け入れることこそが、より良い意思決定を行い、新しい課題に適応し、そして普段なら見落としかねない創造的な解決策を見つけ出すために役立つ。

 「認知ノイズ」の科学

ときどき思考が散漫になっていると感じることはないだろうか。脳がアイデアを飛び回り、以前の決断を再考し、肝心なときに気が散ってしまう。こうしたランダムさはしばしば「ノイズ」として片づけられるが、実は不具合ではなく、有用な特徴である可能性がある。

これは「認知ノイズ」と呼ばれるもので、むしろ脳の働きにおいて重要な部分だとする研究がある。2019年にPNASで発表された論文によれば、脳内の絶えず変化する内部状態が意思決定に直接影響を与えるという。この変動性が柔軟性を保ち、新しい状況への適応を可能にし、なぜある人は他の人より衝動的になりやすいのかを説明する鍵にもなっている。

つまり時折の精神的な混乱は正常であるだけでなく、有用なのだ。私たちの脳は完璧な機械のように動くようには設計されておらず、柔軟性こそがその強みである。ギアを切り替え、さまざまな可能性を検討し、不確実性を受け入れる能力によって、私たちは優れた問題解決者になり、創造的に考え、そして最終的にはより良い意思決定を下せるようになる。

「ミス」がより良い意思決定につながるとき

優れた意思決定には絶対的な確信が必要だと考えられがちだが、実際には必要な情報をすべて揃えられる場面はめったにない。そこで、ある程度の認知の変動が強みとなる。不確実な状況では、思考プロセスのランダムさが複数の可能性を探り、最善の解決策にたどり着くための助けとなる。

たとえばビジネスにおいて、リーダーはしばしば不完全なデータに基づいて決断しなければならない。認知の変動があれば、必要に応じて方向転換ができ、単一の直線的な考え方に固執するのではなく、複数のアプローチを試せる。同様に、人間関係の場面でも、新しい情報や感情の変化に合わせて考えを変えられる柔軟性が、より良いコミュニケーションや関係性につながる。

さらに、認知の変動は創造的な問題解決にも欠かせない。多くの画期的発見や芸術的イノベーションは、最初はミスや偶然と見なされたところから生まれている。たとえばペニシリンや電子レンジ、ポストイットなども、予想外の回り道から生まれた偶然の産物だ。

これらのブレイクスルーは、発明者たちが「誤り」をただ排除するのではなく、認知の変動を受け入れたことによって実現された。芸術家や作家も、意図的に思考をさまよわせることで大きな恩恵を得る。制作の過程では「気が散ること」あるいは「間違った方向」に思えることが、結果的に画期的なアイデアを引き出すきっかけになる場合がある。

認知の変動を受け入れることで、ミスを機会に変え、より革新的で、複雑な現実に適した意思決定を行うことが可能になる。

次ページ > 認知の変動を活かす

翻訳=酒匂寛

タグ:

続きを読むには、会員登録(無料)が必要です

無料会員に登録すると、すべての記事が読み放題。
著者フォローなど便利な機能、限定プレゼントのご案内も!

会員の方はログイン

ForbesBrandVoice

人気記事