結婚して間もないころは、相手を愛することなど造作もないように感じられるだろう。愛しあう2人はごく自然に全力を尽くし、相手に良い印象を与えようとして熱意を示し、お互いを幸せにしようと努力する。だが、時が経つとともに、相手への非現実的な期待が忍びより、これによって夫婦関係に目に見えないきしみが生まれることがある。
こうした重荷は、明確な形で現れるとは限らない。善意や社会的規範の背後に隠れているので、認識することが難しいからだ。それでもゆっくりと、信頼感や親密さ、結婚生活への満足度を削り取っていく。疲労困憊したパートナーは、相手とのつながりを失い、自分は誤解されていると感じるようになる。
結婚生活はしばしば、非現実的な期待の重荷に耐えかねて崩壊する。手遅れになる前にそれを認識し、防ぐことが大切だ。
本稿では、結婚生活に重くのしかかる「パートナーにかかる負担」について、研究によって判明した2つのタイプを解説しよう。
1. 常に完璧を求める
完璧主義は、結婚生活における立派な目標のように見えるかもしれない。だがこれが、知らないうちに夫婦の関係を破壊する要因になることは多い。
兆候はささいなものだ。はじめは配偶者に対して、揉めごとに完璧に対処してほしい、理想的なワークライフバランスを保ってほしい、あるいは常に感情の振れ幅を一定に保ってほしい、といった要求を持つことが出発点となる。
当初、これらの期待は配偶者に素晴らしくあってほしいという願いから生まれているように見える。だが時とともに、人間なら必ず犯す過ちもまったく許さない、実現不可能な基準へと変貌していく。
例えば、自分が手一杯になってしまった時に、パートナーがそのことを直観的に察し、すぐさま完璧な解決策を提案することを期待しているとしよう。その場合、自分がストレスを感じていることに相手が気づいてくれなかったり、自分が望んだことと完璧には一致しない対応を見せたりした場合には、失望感を覚えるはずだ。「なぜ私の心を読んでくれないのか」と感じ、もっと相性のいいパートナーなら、自然と自分の要求を察知してくれるはずだと思い込んでしまう。
しかしこうした期待は、相手に対してこちらの感情を何もかも察知するように求めるといった、理不尽な重荷をパートナーに負わせるものだ。これは、どんなパートナーであっても実現不可能なタスクだろう。自分以外の人の感情を完璧に察して、常に満点の対応ができる人など存在しない。しかしこの理想がかなえられないと、不満や怒りの感情が生まれる。