経済・社会

2025.04.01 09:15

一見穴だらけに見える台湾有事の避難計画 発表した政府の意図と責任は

Peter Hermes Furian / Shutterstock.com

自衛隊がつくる防衛計画との整合性も必要になる。例えば、自衛隊が陣地を造ろうとしている場所を避難する住民の集合場所にしても意味がない。ただ、住民避難計画を通じ、中国側に自衛隊の作戦の意図をある程度知らせることにはなる。松村氏は「住民に周知させることが重要ですから、避難計画に関して中国側に情報が流れるのは仕方ありません。逆に避難計画が具体的であればあるほど、中国に対する抑止力は高まります」と語る。

誰の目からも「この計画があれば安心だ」と思ってもらえるような避難計画にしていく努力が求められる。「避難まで6日も待つのか」「避難しても生活できるのか」と思われてしまっては、住民の不信感を呼ぶ。関係各自治体と繰り返し、協議を重ねて納得してもらえるようにする作業が必要だ。松村氏は「住民の安全のために何が良いのか、防衛計画も含めた基本的な方針をしっかり詰めることが最も重要です。もちろんその背景には、台湾有事の可能性があるわけですが、日本国民の保護が大前提で、そのうえで台湾への協力を考えるという姿勢がなければ、住民の信頼を得られないでしょう」と話す。

また、政府は昨年3月、台湾有事などに備え、住民たちが2週間ほど避難できる新たなシェルターを整備する指針を公表した。石破茂首相は今年2月、シェルターを確保する実施方針を来年3月までにまとめる考えを示した。台湾や中国の邦人保護は、外務省が中心になって議論を進めているとみられる。今後、避難計画と併せ、総合的な対応策を国民に説明する必要がありそうだ。

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