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経済・社会

2025.03.12 17:15

米国防次官候補が促す韓国の自立 選択的核拡散もいとわない考えか

エルブリッジ・コルビー(Bill Clark/CQ-Roll Call, Inc via Getty Images)

エルブリッジ・コルビー(Bill Clark/CQ-Roll Call, Inc via Getty Images)

トランプ米大統領が国防総省ナンバー3の国防次官(政策担当)に指名したエルブリッジ・コルビー氏の承認に向けた公聴会が4日、上院軍事委員会で開かれた。日本の報道では「防衛費の国内総生産(GDP)比3%への引き上げ」というコルビー氏の主張に焦点が当たったが、より深刻な状況に置かれたのは韓国だったようだ。

コルビー氏は韓国について「はるかに強力な軍隊を保有した信頼できるモデル」と持ち上げた。「私はロシアが欧州を無慈悲に踏みにじったり北朝鮮が韓国を占領したりすることを望んでいない」とも語った。そして、「中国と北朝鮮が核兵器を劇的に増やしている。韓国との戦略的協力を拡大する追加的な選択肢を模索しなければならない」とも語った。コルビー氏が米韓同盟を高く評価し、韓国に対する、米国の「核の傘」を含む拡大抑止力の強化に前向きの態度を示したとも読める。

しかし、防衛省関係者は「実態は全く逆で、韓国(軍)の自立を促す発言だと思う」と語る。コルビー氏は従来、ロシアは欧州に任せ、米国は中国との競争に集中したいという「中国に対する1正面作戦」の論者として知られる。台湾有事の際、在韓米軍を転用したい考えを示したこともある。北朝鮮が韓国を核攻撃した場合、米国が北朝鮮に報復核攻撃を行うことにも懐疑的な考えを持っている。

この関係者はコルビー氏の発言について「韓国は強力な軍隊を保有しているのだから、単独で北朝鮮を抑止してほしいという意味だ」と語る。「中国をけん制できる位置にある在韓米軍を放棄することはないだろうが、北朝鮮の脅威だけに使うのはもったいないと、コルビー氏は考えている」とも指摘する。

それでは、コルビー氏が語った、北朝鮮の核戦力に対する「追加的な選択肢」とは何だろうか。同関係者は「韓国の核武装、選択的核拡散もいとわない考えだと思う」と語る。この関係者によれば、米国や米軍の内部では現在、「北朝鮮の最大目標は金正恩体制の維持であり、米国を核攻撃する考えはない」という分析に、ほぼ落ち着いている。このため、米国による「核の傘」を韓国にまで広げ、あえて北朝鮮による米核攻撃の危険性を負うリスクへの戦略的な価値を見出していないようだ。

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文=牧野愛博

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