経済・社会

2025.03.12 17:15

米国防次官候補が促す韓国の自立 選択的核拡散もいとわない考えか

エルブリッジ・コルビー(Bill Clark/CQ-Roll Call, Inc via Getty Images)

また、1990年代までのように、米戦術核を朝鮮半島に再配備することも現実的な選択肢ではない。同関係者は「実際に配備できる戦術核がほとんどないのが実態だ」と指摘する。北大西洋条約機構(NATO)との「核の共有」では、自由落下型爆弾のB61戦術核を欧州に100発程度配備しているとされるが、米本土にも100発程度しかないとみられている。縦深性がなく、簡単に攻撃されやすい韓国に配備するリスクも極めて大きい。オハイオ級戦略ミサイル原潜(SSBN)に搭載できる低出力核弾頭のSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)も20数発程度しかないという。

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そうなった場合、コルビー氏が語る「追加的選択肢」には、韓国による核武装も含まれてくるのかもしれない。もとより、トランプ大統領は1月の就任早々、北朝鮮を「核保有国」と呼んだ。「北朝鮮の核保有を事実上認めて米朝国交正常化を果たし、ノーベル平和賞を狙うつもりではないか」という憶測も消えない。核不拡散条約(NPT)体制の維持など、トランプ政権の眼中にはないのだろう。

防衛省関係者は米国や米軍内部の雰囲気について「日米同盟の重要性を疑う声は聞かれないが、米韓同盟の必要性について指摘する声は時々聞かれる」と話す。もし、台湾有事が現実のものとなったとき、習近平中国国家主席は米軍の戦力分散を狙って、金正恩朝鮮労働党総書記に韓国侵攻をそそのかすだろう。

コルビー氏の公聴会を聞いて、より緊張しなければならないのは日本ではなく韓国だと言えるかもしれない。

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文=牧野愛博

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