今回のリストについて、50ベストのコンテンツ・ディレクター、ウィリアム・ドリュー氏は、「エボリューション(進化)」であるという。
「例えば、50位以下のリストではあるが、ラオスのレストラン(ビエンチャンのDoi Ka Noi、86位)が初めて入ったのは大きい。そこからさらなる美食文化が花開くきっかけになればと思う。なお、未知なる地域をさらに知るために、投票者の構成も少し変化させた。中国本土の投票者を若干ながら増やし、今回のリストからそれが反映されている」と語る。これにより、今後これまであまり知られていなかったレストランや地域がリストに上がってくる「深化」も期待できる。
今年の後半には、北アメリカのベストレストラン 50の発表を予定しているほか、「可能性レベルではあるものの、現在は中東・北アフリカとなっているリストを、中東・全アフリカを対象に広げたり、ヨーロッパの地域版リストのローンチすることも視野に入れている」といい、全世界をカバーする方向に進んでいる。
「50ベストは、高級店に限らず、おいしい料理を出して人気のあるレストランのランキング。例えば、アメリカのバーベキュー料理もランクインする可能性がある」とドリュー氏。
“ニューリッチ”と呼ばれる30〜40代の富裕層は、堅苦しいサービスを好まない人も多く、カジュアルな雰囲気で質の高い料理を出す「ファインカジュアル」というスタイルの店も増えている。そうした区分けを曖昧に、多様な「ラグジュアリー」の形が注目されているということも言えるだろう。
アジアの注目シェフが語る「それぞれのサステナブル」

50ベストが選んだシェフからメディアが直接話を聞くミート・ザ・シェフ(Meet the Chef)のイベントでは、「サステナブル」というテーマが設けられ、各店のさまざまな取り組みが紹介された。
例えば、多くが輸入食材に頼る香港で、コンテンポラリーフレンチ「モノ(MONO)」は、2019年に世界No.1に輝いた「ミラズール(Mirazur)」出身のシェフが地元の農家に対して味のフィードバックを行い、農と食をつないでいる。マカオの「シェフ・タムズ・シーズン(Chef Tam’s Season)」は、24節気をテーマに汽水域に住む魚の魅力を伝える。マレーシア・ペナンの「オ・ジャルダン(Au Jardin)」は、食事の後に農場についてのカードを渡し、希望する人には後日無料で農場などを案内する。
一方、ムンバイのインターナショナルレストラン「アメリカーノ(Americano)」は、街場のシェフの地位があまり高くないインドで、未経験者を教え、ワークライフバランスや職場環境を改善して、人に対するサステナブルなアプローチを行っているという。