ユニコーン企業は2013年にその概念が提唱された当時、世界で39社しか存在しなかった。しかし現在は1200社超にまで増加。そうしたなか日本のユニコーン企業数はわずか8社にとどまっている(※)。
2025年2月4日から3日間にわたり名古屋市で開催されたスタートアップの祭典「TechGALA Japan」では、タイミーやメルカリなどに投資してきた大手独立系ベンチャーキャピタル(以後VC)のグローバル・ブレイン代表 百合本安彦とシード・アーリー期のスタートアップを主な投資対象とするXTech Ventures(クロステックベンチャーズ)インベストメントマネージャーの鈴木かおりが登壇。
世界のスタートアップ市場における日本の可能性や、日本からユニコーン企業を生む仕組みなどについて意見を交わした。
スタートアップ冬の時代、日本はなぜ特別なのか
「トップVCが挑む:ユニコーン創出の新たな土壌作り」と名付けられたセッションでは、百合本が総額約3400億円を運用するグローバル・ブレインの活動を紹介した後、世界市場の動向について説明を始めた。
世界でユニコーン企業の時価総額合計は、4兆ドル超。なかでもアメリカは691社のユニコーン企業を生み、時価総額の合計が2兆5000億ドル以上と、世界の半分を占める。次いで国別のユニコーン企業数では中国、インド、イギリスと続き、上位4カ国で世界のユニコーン企業数、時価総額の80%以上を占める現状がある(※)。
百合本によるとアメリカが世界を牽引するなか、2021年4Qのインフレ加速による各国中央銀行の金利引き上げをきっかけに世界のスタートアップ市場ではブレーキがかかり、VCの投資金額は減少傾向にある。2024年には前年比で14%上昇し、徐々に回復基調も見えているが、世界のスタートアップ市場は今もって「冬の時代」にあるという。

2022年11月のOpenAIによるChatGPT発表後は、世界的にAI領域の投資が増加し、2024年、アメリカ全体のVC投資金額にAI領域が占める割合は、47%まで伸長。しかしアメリカでそれ以外の領域への投資はピーク時の2021年から52%減り、全領域で見たグローバルでのIPO調達額も70%以上減少している。
百合本は、世界でユニコーン企業の数は増え続けているものの、時価総額の調整が進行している状況だと分析。そしてアメリカのスタートアップにおける人材の新規採用数が2021年以降、減少傾向にあることを示すグラフデータを表示した。
アメリカではVCの投資が停滞するなか、スタートアップがキャッシュ不足に陥るまでの残存期間、ランウェイを伸ばすために、採用をはじめ開発やマーケティングなどのコストを削減。そうしたことからスタートアップの成長は鈍化傾向にあり、市場での競争力が弱まっていると指摘した。
一方で日本について百合本は、「よくガラパゴス化していると揶揄されますが、日本はグローバルの市況悪化の影響をあまり受けていない状況があります」と語る。日本のVCの投資金額は2023年に減少したものの、その減少率は諸外国に比べて小さく、24年の4Qでは回復傾向が見られることを説明。さらに、日本では2022年1QからシリーズA〜Cのスタートアップ評価額が下がっておらず、国内のIPO件数こそ一時的に減少したものの、その後は堅調に推移していると評価した。
「海外VCの投資が抑制されている今こそ、日本のスタートアップは海外に出ていくべき。私は20年以上この業界でやってきましたが、日本にはかつてない大きなチャンスが訪れていると思います」(百合本)
※ CB Insightsのデータをもとにグローバル・ブレインが算出。