SMALL GIANTS

2025.03.19 10:15

なぜ日本は今ユニコーン創出に有利なのか【TechGALAレポート#5】

グローバル・ブレイン代表取締役社長 百合本安彦(中央)とXTech Ventures(クロステックベンチャーズ)インベストメントマネージャー 兼 Chief of Staff 鈴木かおり

トップVCが実践するユニコーン創出の土壌づくり

日本のお隣、韓国のユニコーン企業数は14。他にもイスラエル(23社)やシンガポール(15社)など、世界には日本より国土が狭く、人口が少ないにもかかわらず、日本より多くのユニコーン企業を生み出している小国がある。それらの国のように、どうすれば日本はユニコーン企業を生む土壌をつくれるのか。

モデレーターは地元・名古屋に本拠地を置き、美容機器や健康家電を手がけるメーカー、MTGのCVCと地域の起業家支援のシードファンド、2つの代表である伊藤仁成(写真左)が務めた。
モデレーターは地元・名古屋に本拠地を置き、美容機器や健康家電を手がけるメーカー、MTGのCVCと地域の起業家支援のシードファンド、2つの代表である伊藤仁成(写真左)が務めた。

XTech Venturesの鈴木は、起業家がアイデアを形にしやすい環境を整えることが重要だと話す。

「起業家の方には、出資に何としても応えようという思考で事業内容を考えてほしくない。私たちは起業家の方が起業を考えたタイミングでお声がけをいただき、インキュベーションプログラムという形で半年間は出資をせずに、伴走しています。起業家の方のバックグラウンドから入り、本当に実現したいことや相性のいい事業領域を探ることからディスカッションして、出資者にも共感してもらえる世界観を探っていきます」(鈴木)

スタートアップは起業時、ビジネスモデルの検証や資金調達など、多くの課題に直面する。VCが初期に戦略的なハンズオン支援を行うことで、スタートアップの成長スピードを速め、ユニコーン誕生につながると百合本も同意する。

「我々は大体シリーズAから入りますが、ダイヤモンドの原石であるスタートアップを徹底的に磨き上げ、バリューアップしていくことは、VCとスタートアップ、双方の生きる道だと考えています。そのために今、我々はアメリカを代表するVC、a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)をベンチマークし、彼らがどういう機能で、どの領域にどれだけの人員で支援しているかといったことを常に分析しています」(百合本)

グローバル・ブレインではそうして得た情報をもとに、プロダクト開発や組織作りなど、一般的な投資後のサポートメニューを提供するチームに加え、知財やガバメントリレーションズのハンズオン支援まで網羅したチーム体制を構築している。具体的には、同社のメンバーがスタートアップ経営者と毎日のように戦略を一緒に考えたり、営業活動に同行したり、人材採用に関わったり、そうした支援を6カ月や1年などといった期間を定めて実施しているという。その結果、同社が支援するスタートアップは、80%の確率で事業計画を達成できるというトラックレコードができあがった。

百合本はユニコーン創出に向け、VCとして徹底したハンズオンと、前述の通りスタートアップが海外で事業展開できるように後押しすること、このふたつに注力していく考えを示した。

世界が注目する中部地区の実証フィールド

XTech Venturesの鈴木は、中部地区にスタートアップの機運が高まっていると期待を寄せる。一方で「まだまだエリア全体として頑張るべきところがある」と言い、ユニコーン企業が生まれるような地域のエコシステム活性化に力を入れるべきだとも説く。

それを受け、水素と炭素循環の技術・サービス開発を目指すスタートアップを、実証フィールドや資金の提供を通じサポートすることを目的として、日本特殊陶業が愛知県小牧市で立ち上げた「SUISO no MORI(水素の森)」プロジェクトでCVCファンドを運営するグローバル・ブレインの百合本は、次のように語った。

次ページ > 世界から中部地区にスタートアップを

文=本田賢一朗 編集=大柏真佑実

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事