名古屋はかつてスタートアップ不毛の地と言われていた。しかし2018年に愛知県が「Aichi-Startup戦略」を策定したことをきっかけに、「NAGOYA INNOVATOR'S GARAGE」や「なごのキャンパス」などのインキュベーション施設が開設。2024年10月には日本最大級のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」が開業するなど、今や国内有数のスタートアップ育成都市へと成長しつつある。
2025年2月4日〜6日に名古屋市で行われたグローバルなスタートアップの祭典「Tech GALA JAPAN」では、そんな名古屋発のスタートアップ経営者でEXIT経験をもつ4名が集結した希少なセッション「セントラルジャパンスタートアップ革命:EXITのその先へ」が開催された。
モデレーターを務めたのは、名古屋の女性起業家でスタートアップ支援も行うLEO代表の粟生万琴。粟生と普段から交流があるという若き実業家たちからは、EXIT前後の変化や苦労について、数々の本音が飛び出した。
<スピーカー>
服部雄太◎はっとりゆうた GOOD AID取締役。2017年、処方箋なしで病院の薬(処方箋医薬品以外の医療用医薬品)を購入できる「零売薬局」事業を核に、訪問看護、EC事業を展開するスタートアップ「GOOD AID」を創業。2024年1月、医薬品の法規制変更をきっかけに、上場企業のファーマライズグループにバイアウトした。
佐藤彰紀◎さとうあきのり ワンダープラネット取締役COO兼CFO。新卒で大和総研の調査本部(現大和証券)に入社し、グループ本社経営企画、投資銀行部門のアナリストなどを歴任の後、2016年に地元名古屋にUターン。ゲームテックベンチャーのワンダープラネット取締役CFOに就任。2021年、IPO準備開始から5年で東証マザーズ上場を実現した。2024年より現職。
大西泰平◎おおにしたいへい スタメン代表取締役社長。大学卒業後、大手広告会社勤務、モンスターラボのベトナム拠点事業責任者を経て、2016年にスタメンを創業。HRテックサービス「TUNAG」を始め転職エージェント、オンラインコミュニティなど複数事業を展開。創業から4年で東証グロース市場に上場を果たす。2023年1月より現職。
萩原悠太◎はぎわらゆうた PREVENT代表取締役。名古屋大学大学院医学系研究科修了後、理学療法士として病院勤務を経て、2016年、名古屋大学発ヘルステックベンチャーPREVENTを設立。累計約10億円の資金調達を経て、2023年末に株主だった住友生命グループに加入し、EXIT。企業の健康保険組合や自治体などを顧客に、健康づくり支援事業を展開している。
EXIT後に起きた思わぬ変化
社内外のステークホルダーを巻き込んで行われるEXIT。トークはEXITが企業、特に社員へどのような影響を及ぼすのかという話題で幕を開けた。
「ポジティブな反応があった」というのは、薬局運営を手がけるGOOD AID取締役の服部と、名古屋大学発ヘルステックベンチャーPREVENT代表取締役の萩原だ。
調剤薬局大手のファーマライズグループにバイアウトした服部は、社員から感謝をされたという。理由は、同グループの評価制度や福利厚生が確立されているためだ。GOOD AIDでは、バイアウト前に目立った社員の昇給や評価制度がなく、事業の拡大を続けてきた。そうした労働環境が、バイアウトをきっかけに改善されたのだ。
バイアウト後はGOOD AIDの全社員をファーマライズグループに転籍させ、そこからGOOD AIDに出向するという形をとってるが、バイアウト前から在籍する社員は現在、とても晴れやかな顔をしているという。
「合併に関する社員説明会などで社員から『社長、ありがとう!』と言われたりすると、少し複雑な気持ちになります(笑)」(服部)
萩原は、住友生命グループ加入前後の社員の変化を次のように話す。