ポルトガルの首都リスボンの郊外にあるシントラは、町全体が世界遺産に登録され、いくつもの宮殿が残る町。19世紀の英国・ロマン派の代表的な詩人、ジョージ・ゴードン・バイロンが滞在したことでも知られている。
そのシントラに2月22日、新たな文化施設が誕生した。ブラジル人のコレクター、レナート・デ・アルバカーキが孫娘とともに創設したアルバカーキ財団を通じ、この地に所有していた別荘を改築。長年をかけて収集してきた明朝、清朝時代の陶磁器のプライベート・コレクションを展示する施設をオープンした。
国際的に活動していた元人権派弁護士で、2009年にアート界に転向、ルイーザ・ストリナやハウザー&ワース、マイケル・ワーナーなど、いくつかの著名ギャラリーでディレクターを務め、アルバカーキ財団の共同創設者となった孫のマリアナ・テイシェイラ・デ・カルヴァーリョが祖父を説得し、実現させたものだという。
陶芸作品に特化した文化施設として構想されたこの施設は、ポルトガルが東西の異文化間の交流において重要な役割を果たし、中国の磁器を輸入し始めた15世紀からの両国間の興味深い文化的、歴史的つながりを強調するものだ。
アルバカーキ財団は革新的なキュレーションを通じて、中国の磁器が世界に与えた影響について探求するほか、美術品としての陶磁器の重要性にとってのかつてない国際的プラットフォームとなる。陶磁器を制作する新進気鋭のアーティストたちにレジデンシーの機会を提供するほか、この分野で活動するさまざまなアーティストの展覧会を開催する計画だ。
シアスター・ゲイツの個展を開催
土木技師だったレナート・デ・アルバカーキは、2600点を超える中国の陶磁器を収集。特に明朝・清朝時代の品々に対する審美眼で知られ、非常に貴重なコレクションを築いている。そして、それらはニューヨークのメトロポリタン美術館やロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館をはじめとする国際的に有名な文化施設に貸し出されてきた。
アルバカーキ・コレクションの目玉となる収蔵品には、ポルトガル人が初期に中国に制作を依頼した磁器、「ファースト・オーダー」に含まれる数少ない品々も含まれている。
財団は、ディレクターのヤコポ・クリヴェッリ・ヴィスコンティの監督のもと、現代アート作品の展覧会も開催していく方針。その初回のイベントとして、ベッキー・マグワイアがキュレーションを担当した陶器展「Connections」を行っている。