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2025.03.25 14:15

大学生協で「ケバブと豚汁」を食べる京大准教授がハラル食、宇宙と戒律について思うこと

京都大学大学生協食堂「カフェテリアルネ」の「ケバブプレート」(550円、Lサイズは605円)と「豚汁」(132円)。京都大学総合博物館准教授 塩瀬隆之氏推しの組み合わせ

宇宙ではどっちに向かって礼拝するか——「ムスリムとしての責任」と「不作為への寛容」

京都大学では、イスラム圏からの留学生も多かったため、大学生協が比較的早い時期からハラル認証取得に向けて準備をされていたそうです。大学の国際化とは簡単にいいますが、たとえばこのイスラム圏から来た留学生や先生、さらにはそのご家族もが、安心して大学内外で食事できる環境整備が重要で、大学構内はもとより街ぐるみでの国際化も急務となります。

学生時代に知ったもう一つのイスラム教徒の戒律が、メッカのカアバ神殿に向かって欠かさずに毎日5回(宗派によっては3回の場合も)する礼拝です。ある日の朝方、研究室に入ろうとドアを開けた瞬間、マレーシアから来られたその研究員の方が礼拝をしている場面に出くわしました。何か見てはいけないものをみてしまった気が勝手にしてしまい、そっとドアを閉めて礼拝が終わるまで研究室の前で待っていたことを覚えています。

大学教員になってから、留学生のための国際学生寮について検討する委員会メンバーを務めたことがあるのですが、そのときのエピソードを思い出して礼拝室を設計図面に書き込んでもらう提案のきっかけになりました。最近でこそ礼拝室のある空港や商業施設も増えてきましたが、こういった配慮も国際化に必要な要件の一つに違いありません。

ちょうどその時期に読んだ面白い論文がありました。マレーシア初の宇宙飛行士シェイク・ムザファ・シュコア氏などのために、ムスリム(イスラム教徒)が、宇宙からどの方角に向かって礼拝をすればよいかを考える国家プロジェクトについてです。

地球のまわりを高速でぐるぐる周る国際宇宙ステーションからみれば、秒単位でメッカの方角が変わってしまうので、その方角をソフトウェアで計算できないかという内容でした。また無重力状態での礼拝の姿勢も維持が難しかったり、飛行期間がラマダーン(断食月)と重なるなどしたため、太陽が一日になんども出たり入ったりして日中の定義も悩ましいとありました。シュコア氏にとっては、宇宙でのミッションも重要ですが、それと同様にあるいはそれ以上にムスリムとしての責任を果たすことも重要だと発言されています。

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文=塩瀬隆之 編集=石井節子

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