37万部のベストセラーとなった『「学力」の経済学』の著者である中室牧子氏が、9年の時を経て、世界で最も権威のある学術論文誌の中から信頼性の高い研究を厳選、これ以上ないくらいわかりやすく解説した待望の新刊『科学的根拠(エビデンス)の子育て』を発表した。
以下、ダイヤモンド・オンラインより、同書からの引用記事を紹介する。
「鶏口となるも牛後となるなかれ」は正しい
私立学校では通知表に順位が書かれていたり、学習塾では模試の順位を書き出して廊下に貼り出されたりすることもあるそうですから、子どもたちが自分の順位を意識することもあるでしょう。
ここで、次のような状況を想像してみてください。受験の直前に、模試で80点を取れる実力を持つAさんとBさんがいたとします。
この2人の志望校は同じだったのですが、入試の結果、Aさんは第1志望校にギリギリで合格し、Bさんはギリギリで不合格となりました。Bさんは第1志望校よりは少し偏差値の低い第2志望校に合格し、進学しました。
先にも述べたように、AさんとBさんの実力はほとんど同じですが、Aさんは進学した学校での成績順位が最下位となり、Bさんは1位になりました。
このあと、成績や進学で有利になるのはAさんとBさんのどちらでしょうか。
多くの人は、「少しでも偏差値の高い第1志望の学校に通っているAさんのほうが、周囲の優れた友人から良い影響を受けて、入学後の成績や進学で有利になるだろう」と考えるのではないでしょうか。だからこそ、私たちは、わが子に「少しでも偏差値の高い学校に合格してほしい」と願うのでしょう。
順位についての研究の結果は一貫しています。私たちの予想に反し、のちに有利になるのは、第1志望校で最下位のAさんではなく、第2志望校で1位のBさんです。「鶏口となるも牛後となるなかれ」とはよく言ったものです。
小学校の学内順位が中学校での学力に影響する
このことを現実のデータであらわしたのが、図1です。同じテストを受け、同じ点数だけれども、学校内の順位が異なる児童・生徒がいることを示しています。この図は、データのばらつき具合を示すのに用いられる「箱ひげ図」と呼ばれます。