日本でもビジネスの拡張は目覚ましく、2023年通期では、国内での教育アプリのダウンロード数、および収益ともにカテゴリートップとなった。そんなDuolingoの日本でのサービスを率いるのは、現カントリーマネジャーの水谷翔氏だ。
日本でのサービス開始の2020年8月に先立ち、当時、日本でのカントリーマネジャー(日本のビジネスの総責任者)の採用も始まっていた。だが採用活動は難航、なかなか全員が”I LOVE him(her)!”を言う候補者は見つからない。
そこに現れたのが水谷氏だった。
2020年5月に内定し、同年8月に入社した水谷氏が採用プロセスのすべてをクリアし、ポジションを獲得するまでの詳細について以下、Forbes JAPAN独占インタビューに答えた。
連絡はヘッドハンターや人事担当ではなく「ビジネス部門」からだった
2020年3月、水谷は新しいチャレンジをしたいと思い転職先を探していた。そんな時にLinkedin経由で1通のメールが届く。差出人はDuolingoのキャリー。
「私たちは、日本での成長とマーケティング活動を開始するために、カントリーマネージャーを探しています。あなたの経験とマーケティングの専門知識は、特に関連性が高く興味深いです!」という内容だった。
Duolingoという名前は聞いたことがあったが深くは知らなかった。ただ、水谷の目を引いたのは、キャリーがStrategy & Business(戦略ビジネス)部門の人間だったことだ。
「なぜ、ヘッドハンターやHR(人事や人材獲得担当部門)ではなく、ビジネス部門の人間が自ら連絡してきたのだろう?」
興味を惹かれた水谷が折り返し連絡すると、ほどなくキャリーとのオンライン面談となった。
キャリーはスタンフォードMBA、世界最強ファンドKKR出身。水谷は「Duolingoにはこういう優秀な人間がいるのか」と驚いた。実は彼女は、ビジネス部門でのメイン業務の傍ら、遠隔で日本のマーケティング活動を行っており、アジアの中でも特に有望視している日本市場の専任を探していたのだ。
面談で水谷は、Duolingoのアプリを触ってみて感じたことをキャリーに伝えたという。
「『Duolingoのアプリは初級者向けにはよくできているけれど、中級から上級を目指す人には簡単すぎて物足りないと感じる』と言ったんです。ちなみに、今はもうこの課題は解決していますが」
キャリーも同じ認識だった。そしてさらに、日本マーケットに対する戦略を考えるうえで、相応しいターゲットは誰だと思うか聞いてきた。
水谷は、「ある程度英語に対する下地があり、そこから上を目指すCurrent Learner(すでに英語を勉強している学習者)ではなく、Potential Learner(これから英語を身に付けたいと考えている、まだ勉強を開始していない潜在学習者)だと思う」と答えたという。
するとキャリーは満足げにうなずき、「今の日本市場には初級中級者向けの英語学習ツールがないため、Duolingoの課題は逆に優位性となり、日本で独特のポジションを築くことができるだろう」と話した。
その洞察力に水谷は驚いた。遠隔で活動しているにもかかわらず、まるで日本に住んでいるかのように日本ユーザーの特性を理解していたからだ。