教育

2025.03.28 11:15

京大准教授の寄稿「平和の反対語は?」が話題 | 鹿児島ラ・サール中入試問題に

※以下は、塩瀬氏による「展覧会後」の書き下ろし所感である。

展覧会を終えて——塩瀬隆之

「へいわのはんたいご」に関して寄稿させていただいた後、特別展開催中の美術館や学校現場などで「平和の反対語について考えてみた」という声をたくさんいただきました。美術館では多様な年代の方々が、学校では生徒と先生が一緒に、それぞれの考えた「反対語」をきっかけに想像以上に長く対話が続いたという感想を多くいただきました。

まず「戦争」や「争い」という言葉からはじまり、次に自らの経験に照らした身近な言葉が思い浮かんでくるようです。「安心できない」「選択の自由がない」「明日のことを考えられない」など、言葉の一つ一つに複雑な想いも見え隠れしますが、実体験をともなった自分たちの言葉だからこそ気づけることもあるようです。

借り物の難しい概念を持ち込まずとも、自分にとっても相手にとっても、お互いが大切にしていることを守り、当たり前のようにそれが奪われずにすむことの重要性を認識することです。そしてそれは紛争地のような特別な場所だけでなく、企業のオフィスや学校の教室など、ふだんの生活からも、もちろんそれが脅かされるような場所であってはいけないことを意味します。

そう考えると、私自身が関心を寄せてきた話題、生まれた子どもに贈られる「君の椅子」の物語や「学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)」なども、安心できる居場所づくりという意味で通底していたのかも知れません。

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——ちなみに、同「いわさきちひろ ぼつご50ねん こどものみなさまへ みんな なかまよ」の初日に、私はオープニングの挨拶の機会に次のように話しました。

「この展示室のなかで紹介する『ひとりひとり』の絵本のなかに、一番来館者の皆さんに見ていただきたい言葉の一つが、『簡単にふたりにならない』だったんです。ぼくたちはすぐ誰それと『仲良くしましょう』と簡単なことのように言ってしまうのですが、谷川俊太郎さんの詩には、

ひとりひとり 

簡単にふたりにならない

ひとりひとり 

だから手がつなげる

という言葉があります。

これは国語の授業であったら、「だから」という接続語では怒られそうな気もするんですけど、ここに谷川さんのすごい言葉が入っているんだと思います。

私たちはそんなに簡単に一緒になれるわけではないし、歴史もあるし、諍(いさか)いもあるし、でもそれらを飲み込んででもちゃんと隣にいる。ということが平和に向かう大事な一歩だと思うのです」

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編集=石井節子

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