磯田氏の呼びかけに最初に賛同したのは北海道東川町、次いで剣淵町、愛別町が続いた。まちに生まれた全ての子どもたちに、名前と誕生日、そして一連番号が刻まれた「世界に一つだけの椅子」が届けられる。作られる椅子の数は、生まれた「新しい生命」の数でもあるのだ。
その後もゆっくりと自治体の参加が続き、2015年には、本州第1号となる長野県売木村が参加。2018年には福島県葛尾村も加わった。現在参加自治体は11となり、まちに生まれた子どもたちに贈られた椅子の数は2000脚を超え、間もなく2500脚になろうとしている。
さらに、地域の枠を超えて、個人として参加することのできる「君の椅子倶楽部」の仕組みも2009年秋からスタートしており、これまでに2260脚の椅子が全国の子どもたちの元に届けられている。新しい生命の誕生を祝福し、居場所を贈る「君の椅子」への共感は、北海道から日本各地へと静かに、だが確かに広がっている。
Forbes JAPANでは以下、磯田氏と京都大学総合博物館准教授 塩瀬隆之氏が2023年1月、「ものづくり」「居場所づくり」について「Impact Hub Kyoto」で行った対談企画を一部抜粋、編集の上お届けする。
なお塩瀬氏は「機械学習による熟練技能継承支援システムの研究」が専門で、「ATR 知能ロボティクス研究所」研究員も務めた工学博士である一方、NHK Eテレ「カガクノミカタ」番組制作委員、日本科学未来館「“おや?”っこひろば」総合監修者、文部科学省中央教育審議会委員(数理探究)を務めるなど、教育の分野にも貢献は多い。また、2021年3月の記事「岐阜市に「不登校児専門公立中」開校。除幕式で会場を涙させた京大准教授のスピーチ」は大きな反響を呼んだ。
※対談は「インパクトハブ京都」https://kyoto.impacthub.net/ で行われた。