教育

2025.03.28 11:15

京大准教授の寄稿「平和の反対語は?」が話題 | 鹿児島ラ・サール中入試問題に

ある高校での講演で「まなぶ」の反対語を尋ねたときに、「教わる」という言葉を書いた生徒さんがいました。講演後の高校生代表者挨拶で、その生徒さんが「わたしたちは三年間、教わってばかりで自ら学んでいなかったことに気づかされました」とその気づきを紹介してくれました。このように、反対の言葉を一度考えてみることには、言葉の輪郭が見えてくる効果があるのです。

最近、問いかける回数が増えてきた言葉の一つが「すてる」です。講演や出前授業のテーマとして持続可能社会に関するリクエストが増えているからだと考えられますが、このとき最初に出てくる「リサイクル」「リユース」「リデュース」は、学校の社会の時間などに習う3Rの定着がうかがえます。では、この習ったことのある三つの言葉を使わずに、別の表現で言い換えてもらうとどうなるか。

不要になった日用品を溶かして素材に戻して再利用したり、燃焼時の熱を取り出して利用したりするなど、いわゆるリサイクル技術は、わたしたちが一個人として家庭内で用いることはとてもできません。わたしたちが主体的にできるのはリサイクルゴミとして分別し、適切な回収業者に引き渡すことであり、結果としてリサイクルシステムの一翼を担うことです。ほかにも主体的に持続可能社会に貢献する方法は何かないでしょうか。このとき生活のなかで用いる身近な言葉で「すてる」の反対語を多様に探ることで、様々なアイデアに結び付きます。

たとえば「大切に使う」や「譲る」などの表現が、反対語のワークショップでたくさんの人から提案されます。キレイな形状のペットボトルを、一輪挿しとして部屋の飾り付けに使う方法や、不要品をオンラインフリーマーケットで譲るなど、主体的にとれる行動の選択肢がいろいろ増えていきます。

その前に、どうすればその製品を捨てずに済むようになるでしょうか。それは、製品などにあらかじめ付与された価値とは異なる価値を、もう一度主体的に見出すこと、あるいは自分以外の誰か、そこに価値を見出してくれる人に受け渡すことで、そのモノの価値は延命されます。持続可能社会は、この価値の付与を、不断に創造し続けられる人が集まることによって実現するのではないでしょうか。ゴミと呼ばれるものは、それそのものに価値がないというよりも、わたしたちのアイデアや工夫が不足し、創造性が欠如することによって生み出されているだけではないでしょうか。

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編集=石井節子

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