教育

2025.03.28 11:15

京大准教授の寄稿「平和の反対語は?」が話題 | 鹿児島ラ・サール中入試問題に

自分の経験を振り返ってみても、戦争に関係して覚えていることといえば、小学生のときに足を運んだ広島平和記念資料館でみた、凄惨な写真などしか思い当たりません。目をそむけたくなるような写真をみた印象は残っていますが、目をそむけてしまった結果、戦争がどういったものかについての思考もそこで停止してしまっていました。その記憶を除けば、映画や漫画などフィクションの世界か、どこか遠い国同士の諍いをニュースで見聞きしたくらいでしか、戦争のことを知る機会はありませんでした。戦争をすることがよくないことはわかっていても、それをなくす具体的な方法や、自らに何ができるかを考える機会は決して多くはありませんでした。

いわさきちひろさん自身は、青春時代を戦時下で過ごし、終戦後もベトナム戦争などの報に心を痛めていたそうです。「世界中のこどもみんなに 平和と しあわせを」ということばを残しているのですが、戦争そのものを扱った作品は必ずしも多くはないそうです。

特別展の相談をするなかで、たくさんの絵本を拝見して気づいたのは、いわさきちひろさんは、ただただ日常の子どもたちの姿を描き続けてきたという事実です。「子どもは、そのあどけない瞳やくちびるやその心までが、世界じゅうみんなおんなじ」。子どもの絵本を描いてきた、いわさきちひろさんならではの視点こそ、わたしたちが平和について考えるきっかけとして大切だと直感しました。

反対語のワークショップで、これまで何万人にも問いかけてきた言葉のうち、とくに多く扱ってきたのが「はたらく」と「まなぶ」です。地域住民や会社で働く大人向けには「はたらく」の反対語を、学校で学ぶ児童生徒には「まなぶ」の反対語について、それぞれ問いかけてきました。

「はたらく」や「まなぶ」の反対語に、あそぶ・楽しむ・休む、といったポジティブな言葉が並ぶことは少なくありませんが、そうなると元の言葉がどちらかといえばネガティブな印象だったことになります。

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編集=石井節子

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