今週の夜空の最大の見どころは、2022年以来となる皆既月食だろう。オレンジ色やピンク色の混じった赤色に月面が染まる様子は「ブラッドムーン(血色の月)」と呼ばれ、今回は北米で最もよく見える。(日本では一部地域で部分月食となる)
黄昏の空では、金星と水星が双子のように仲良く光る美しい光景も見ごたえがある。3月第2週の天文情報をまとめた。
3月11日(火)~12日(水):金星と水星が並ぶ

日の入り直後の西の低空で、太陽系の最も内側にある2つの惑星、水星と金星が接近し、寄り添ってきらめく。2025年内に「宵の明星」を拝めるチャンスは、もうあと数えるほどしかない。
水星は金星と比べると約115分の1の明るさにすぎないが、どちらも日没後30~45分後くらいに西の空の低いところを探すと肉眼で見える。30分ほどで地平線に沈んでしまうので見逃さないようにしたい。
3月12日(水):月とレグルスが接近
2日後に満月を控えた明るい月が、12日夕方~13日未明にしし座の1等星レグルスと接近する。夜空で最も明るい星20個に数えられるレグルスは、古代ペルシャやメソポタミア文明の天文学者たちの間では4つある「王家の星」のひとつとして知られていた。残る3つは、おうし座のアルデバラン、さそり座のアンタレス、みなみのうお座のフォーマルハウトだ。
レグルスは春を告げる星でもある。日が沈んだ後の東の空にレグルスが輝くようになると、北半球は春を迎える。
3月14日(金):皆既月食(日本では月出帯食)

今月の天文現象の目玉、2022年11月以来の皆既月食は、北米と南米で13日から14日にかけて観測できる。満月は約5時間かけて地球の影を通過し、米東部標準時14日午前2時26分~同3時31分(日本時間同日午後3時26分~4時31分)に地球の影に完全に入る「皆既食」となる。地球の空気が太陽光を屈折させるため、皆既食の65分間にわたって珍しい赤い月「ブラッドムーン」が出現する。
日本では一部地域で、14日の夕方に欠けた状態の月が昇ってくる「月出帯食(げつしゅつたいしょく)」が見られる。
3月16日(日):月とスピカが大接近
月の軌道は、4つの1等星(スピカ、アルデバラン、レグルス、アンタレス)のすぐ近くを通っている。このため月は毎年夜空でこれらの恒星に大接近し、時にはその前を横切って恒星を隠す「星食」または「掩蔽(えんぺい)」と呼ばれる現象が起こる。

16日宵~17日明け方、おとめ座で最も明るいスピカが、満月を過ぎたばかりの月を追いかけるようにして大接近する。日没の約2時間後、東南東の方角から一緒に昇ってくる月とスピカを見つけよう。
レグルスと同様、スピカが夜空で存在感を示すようになると、春がもうすぐそこまで来ていることがわかる。
今週の星座:しし座

しし座は、3月の宵の東の空を支配する星座だ。ライオンの頭部から前脚にかけて、逆向きのクエスチョンマークのような形の星の並びを「ししの大鎌」と呼ぶ。鎌の柄の先端、前脚の付け根に当たるところに光っているのが1等星レグルスだ。
レグルスから真下へとたどっていくと、おとめ座のスピカが見つかる。
ライオンの尾の部分には、そのものずばり「ししの尾」を意味する名を冠した2等星デネボラがある。レグルスとデネボラの間には「しし座I銀河群(M96銀河群)」をはじめ、幾つかの遠方銀河が横たわっている。暗くなってきたら、南東の空の高い位置にしし座を探してみよう。
