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宇宙

2025.02.17 18:00

観測史上「最多」9つの環を持つ銀河、ハッブル望遠鏡で発見

9つの環を持つブルズアイ銀河(LEDA 1313424)。中央すぐ左にある青色矮小銀河との衝突で9つの環が形成された(NASA, ESA, Imad Pasha (Yale), Pieter van Dokkum (Yale))

9つの環を持つブルズアイ銀河(LEDA 1313424)。中央すぐ左にある青色矮小銀河との衝突で9つの環が形成された(NASA, ESA, Imad Pasha (Yale), Pieter van Dokkum (Yale))

水たまりに落ちた水滴が徐々に減衰する波紋を作り出すように、非常に小型の矮小銀河がより大型の銀河に落ち込んだことで、何重もの星の環(リング)状構造が形成されることが、米航空宇宙局(NASA)のハッブル宇宙望遠鏡(HST)の観測で明らかになった。

恒星からなる二重、三重の環状構造を持つ銀河は多いが、うお座の方向約5億6700万光年の距離にあるこの銀河LEDA 1313424は、銀河衝突によって形成された9つの環を持っているように見える。銀河の外観と形成過程にちなんで「ブルズアイ(雄牛の目=的の中心)銀河」の愛称で呼ばれている。

「矢のように放たれた」

天文学誌Astrophysical Journal Lettersに掲載された最新論文によると、約5000万年前、ブルズアイ銀河の中心部に「矢のように放たれた」非常に小型の青色矮小銀河が衝突して通過した結果、多数の恒星でできた環状構造が少なくとも9つ形成された。衝突によって銀河内のガスや塵(固体微粒子)が銀河の内側と外側の両方に押し出されるのに伴い、それぞれが異なった広がり方を示す星形成領域の波紋が形成されたのだ。星形成を促進したのはまさしく銀河衝突だが、銀河が別の銀河の中心部を通過するのは極めて稀なことだ。

だが、銀河衝突によって既存の恒星同士が衝突することはほぼない。ガスが乱されて塵と混ざり合うことで新たな星が形成され、ブルズアイ銀河の環をさらに明るく輝かせる。

興味深いことに、9つの環を形成した青色矮小銀河は現在、ブルズアイ銀河の左横に位置しており、細いガスの帯でつながった状態になっている。2つの銀河を結ぶガスの帯は13万光年にわたっており、直径10万光年の天の川銀河(銀河系)がすっぽり入るほどだ。

地球から銀河円盤がほぼ真上から見えるフェイスオン(正面向き)の「ブルズアイ銀河」を描いたイラスト。点線は9つある環の各位置を示している(NASA, ESA, Ralf Crawford (STScI))

地球から銀河円盤がほぼ真上から見えるフェイスオン(正面向き)の「ブルズアイ銀河」を描いたイラスト。点線は9つある環の各位置を示している(NASA, ESA, Ralf Crawford (STScI))

特別な瞬間

最新論文の共同執筆者で、米エール大学の教授を務めるピーター・ヴァン・ドックムは「今回の観測は、ブルズアイを非常に特別な瞬間に捉えている」として「このような銀河がこれほど多くの環を持つのは、衝突後のごく限られた期間だけだ」と説明した。
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翻訳=河原稔

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