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2025.03.04 17:00

Yコンビネータも支援、「医師のための」AI学習プラットフォーム

Shutterstock.com

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2年前、カナダ人起業家のヴリシャンク・サイニは自分の進むべき道が定まっていると思っていた。彼は、シカゴ大学医学部に進学し、医師としてのキャリアを追求するつもりだった。しかし、試験に失敗したことがきっかけで、サイニは医療従事者向けの人工知能(AI)活用した学習プラットフォームSimCare AI(シムケアAI)の創業者としての道を歩むことになった。

同社は2月27日、200万ドル(約3億円)のシード資金を調達したと発表した。

サイニが方向転換したのは、医学部に出願するためのテストで不合格となったことが原因だった。「ネット上で再試験に役立つリソースを見つけようとしたが、私が見つけた個人指導パッケージは9000ドル(約135万円)もした。そこで、自分で作ってみようと考えた」と彼は話す。

サイニは、同級生のティグラン・ブドヤンと一緒に試験に合格するために必要なトレーニングができるAIツールを開発した。2人はAIを用いた患者のアバターを作り上げ、研修医や臨床医がコミュニケーションなどの重要なスキルを磨くことを可能にした。

このツールは非常に効果的だった。サイニは、最初の試験での順位は最低レベルだったが、再試験では上位の成績を上げた。2500人以上の学生がこのツールに登録した結果、彼とブドヤンは本格的なビジネスに発展させるため、シカゴ大学を中退した。

2人の創業者は、様々な種類の医療訓練を受ける学生をサポートするAIツール群を構築した。同社は、一流の大学や医療機関に加え、多くのスタッフを育成する必要がある遠隔医療企業と提携している。

「我々は、医療トレーニングにおける大きな課題の解決に焦点を当てている。学生たちが患者とのやり取りを通じて新しいスキルを習得するのは非常に困難だが、我々はAIによってその問題を解決している」とサイニは話す。

SimCare AIの今年の年間経常収益(ARR)は400万ドル(約6億円)に達する見込みで、既に黒字化を達成している。成功の大きな要因は、新技術に対して保守的である認定機関や医療当局から支持を得たことだ。「彼らも、医療トレーニングが大きな課題であると認識している」とサイニは言う。

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編集=上田裕資

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