サイエンス

2025.02.24 16:00

1500年の伝統をもつ中国のコオロギ相撲「闘蟋」、そのルールと勝つための科学

中国のコオロギ相撲「闘蟋」(In Pictures Ltd./Corbis via Getty Images)

中国のコオロギ相撲「闘蟋」(In Pictures Ltd./Corbis via Getty Images)

多くの西洋人は「闘蟋(とうしつ)」という競技を聞いたことがないだろう。しかし、中国では広く知られている。

一部の歴史家によれば、この競技の起源は8世紀、唐の玄宗皇帝の時代にさかのぼる。1100年代までには、洗練された闘蟋の文化が根づき、さまざまな手引書や指南書が書かれ、庶民から支配者層まで幅広く楽しまれるようになった。

文化大革命(1966~1976年)のあいだ、一時的に違法化されたこともあったが、その後は再び人気を取り戻している。

競技の本質はシンプルだ。同じくらいの体重の2匹のコオロギを、小さな容器に入れて戦わせ、勝者を決める。しかし、たいていのスポーツがそうであるように、細部こそが肝心だ。

コオロギの「勝者」が選ばれるまで

強いコオロギの入手は、ある種の科学の域に達している。中国のコオロギトレーナーたちは伝統的に、自分が暮らす街の郊外でコオロギを捕まえていた。しかし、現代の知見によれば、最も強靭なコオロギは、北京の南の東部沿岸に位置する山東省で捕獲したものだという。

北京や上海といった大都市では、大きな「コオロギ市場」が開かれ、人々は捕獲人や業者から、自分が最強だと思うコオロギを購入する。取引のほとんどは、コオロギが成熟し力を存分に蓄える秋に行われる。

伝統的には、体と比べて頭と口が相対的に大きいコオロギが最も競技に向いているとされている。このことは、実験により、科学的にも裏づけられている。

例えば、2008年に学術誌『PLOS ONE』に掲載された論文では、2匹のコオロギを対戦させる一連の実験が行われた。研究チームは、コオロギのサイズと体重を統制して、頭と大顎のサイズが対戦結果に与える影響に注目した。これにより、相対的に大きな武器(頭と大顎)をもつオスは勝率が高く、また対戦した2個体の武器サイズの差が大きいほど、そうした武器(より大きな頭と大顎)をもつオスが勝利する確率が高まることがわかった。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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