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サイエンス

2025.01.20 18:30

船の座礁を機に絶滅した「世界最大の飛べないナナフシ」、20km離れた島で発見

飛べないにも関わらず20km離れた海食柱で再発見されたロードハウナナフシ(Getty Images)

飛べないにも関わらず20km離れた海食柱で再発見されたロードハウナナフシ(Getty Images)

1918年、オーストラリア東岸から600km離れたロードハウ島で、汽船マカンボ号が座礁したとき、死者は1人だけだった。この人物は、船の修理のため避難を余儀なくされたときに溺れてしまった乗客だった。

しかし、それから10年の間に、島に固有だった5種の鳥と13種の無脊椎動物が絶滅した。ロードハウナナフシ(学名:Dryococelus australis)は、またたく間に一掃された種の1つで、1920年に絶滅したとされた。

この絶滅の犯人は誰だろうか?

それは、修理のために着岸した船から逃げ出したクマネズミ(学名:Rattus rattus)だ。この意図せざる移入により、島の生態系は大災害の連鎖に見舞われた。長い間、哺乳類はコウモリ1種しかいなかったこの島に疲れ知らずの齧歯類がやってきたとき、固有種たちはまるで歯が立たなかった。

釣り餌に使われるほどありふれていたロードハウナナフシ

大きな体と、硬く光沢のある外骨格から「ツリーロブスター」というあだ名で知られるこの昆虫は、かつては島の夜景の主役だった。最大全長12cm、重量25gに達する、世界最大の飛べないナナフシだ。

ロードハウナナフシは日中、樹洞に隠れていた。多数の個体が寄り集まることも多く、1つの樹洞から60匹が見つかった記録もある。夜になると樹洞から這い出し、在来植物の柔らかな葉を食べた。緩慢で慎重な動きと、堂々たる体格を持つ彼らは、ちょっと奇妙な外見かもしれないが、ロードハウ島ではよく知られた生態系の一部だった。

しかし、マカンボ号の座礁以来、それまで繁栄していた個体群は壊滅状態に陥った。座礁した船から逃げ出したクマネズミは、天敵のいない楽園のような生態系に降り立った。ロードハウナナフシは動きが遅く飛べないため、選り好みをしないクマネズミには楽な獲物だった。

クマネズミ(Shutterstock.com)

クマネズミ(Shutterstock.com)

かつては豊富に生息していたナナフシの個体数は、数カ月のうちに激減した。樹洞の隠れ家は、貪欲なネズミから彼らを守ってはくれなかった。1920年にはもう、この種は島全体から完全に姿を消していた。彼らの突然の完全消滅は、島のユニークな生物多様性を象徴するキーストーン種(中枢種:生態系へ大きな影響を与える生物種)が失われたことを意味した。

それから数十年、ロードハウナナフシの姿を見た者はいなかった

島から姿を消したあと、ロードハウナナフシは、歴史のページに名を残すのみとなった。だが、1960年代になって、生存の噂がささやかれ始めた。

ロードハウ島から約23km離れた、隔絶された急峻な海食柱(海によって岩盤が侵食されて形成された、柱のような形状の岩)であるボールズ・ピラミッドに挑んでいたクライマーが、死んで間もないナナフシを見つけたと語ったのだ。その後も、同様の死骸は複数回見つかった。
次ページ > 個体群は風前の灯で、この小さな岩石露頭に生き残る個体はわずか24匹だった

翻訳=的場知之/ガリレオ

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