しかし、それから10年の間に、島に固有だった5種の鳥と13種の無脊椎動物が絶滅した。ロードハウナナフシ(学名:Dryococelus australis)は、またたく間に一掃された種の1つで、1920年に絶滅したとされた。
この絶滅の犯人は誰だろうか?
それは、修理のために着岸した船から逃げ出したクマネズミ(学名:Rattus rattus)だ。この意図せざる移入により、島の生態系は大災害の連鎖に見舞われた。長い間、哺乳類はコウモリ1種しかいなかったこの島に疲れ知らずの齧歯類がやってきたとき、固有種たちはまるで歯が立たなかった。
釣り餌に使われるほどありふれていたロードハウナナフシ
大きな体と、硬く光沢のある外骨格から「ツリーロブスター」というあだ名で知られるこの昆虫は、かつては島の夜景の主役だった。最大全長12cm、重量25gに達する、世界最大の飛べないナナフシだ。ロードハウナナフシは日中、樹洞に隠れていた。多数の個体が寄り集まることも多く、1つの樹洞から60匹が見つかった記録もある。夜になると樹洞から這い出し、在来植物の柔らかな葉を食べた。緩慢で慎重な動きと、堂々たる体格を持つ彼らは、ちょっと奇妙な外見かもしれないが、ロードハウ島ではよく知られた生態系の一部だった。
しかし、マカンボ号の座礁以来、それまで繁栄していた個体群は壊滅状態に陥った。座礁した船から逃げ出したクマネズミは、天敵のいない楽園のような生態系に降り立った。ロードハウナナフシは動きが遅く飛べないため、選り好みをしないクマネズミには楽な獲物だった。

それから数十年、ロードハウナナフシの姿を見た者はいなかった
島から姿を消したあと、ロードハウナナフシは、歴史のページに名を残すのみとなった。だが、1960年代になって、生存の噂がささやかれ始めた。ロードハウ島から約23km離れた、隔絶された急峻な海食柱(海によって岩盤が侵食されて形成された、柱のような形状の岩)であるボールズ・ピラミッドに挑んでいたクライマーが、死んで間もないナナフシを見つけたと語ったのだ。その後も、同様の死骸は複数回見つかった。