その一例が、AppliedAI(アプライドAI)と呼ばれるスタートアップだ。同社は、2021年にロンドンで設立されたが、政府の助成金を活用するために翌年アブダビへ拠点を移した。同社は2月11日、中東地域で最大級のアーリーステージの資金調達となる5500万ドル(約85億円)の調達ラウンドを実施したと発表した。
AppliedAIのシリーズAラウンドは、UAEの政府系AI企業、G42の主導によるもので、パランティアやベッセマー・ベンチャー・パートナーズ、マッキンゼーらも参加した。AIと人間の作業を組み合わせることで、バックオフィス業務の自動化を支援するAppliedAIの評価額は3億ドル(約460億円)とされた。
G42は、昨年4月にマイクロソフトから15億ドル(約2320億円)を調達していた。この投資は、G42が中国との関係を解消し、ファーウェイとの協業を終了することを条件としたものだった。
AppliedAIの創業者でCEOのアーリア・ボルーフルーシャンは、医療や保険、製薬などの厳しく規制され、大量の書類を手作業で処理する必要がある業界に注力している。同社の顧客には、アブダビを拠点とする国営医療グループのM42や米国の法律事務所モーガン&モーガン、英国の医薬品安全監視会社Qinecsaが含まれる。
AppliedAIの強みは、AIによる分析と人間のレビューを組み合わせることで、医療や保険分野の請求処理を、従来のアウトソーシング企業よりも迅速かつ正確に行えることとされている。
「私たちの業務は、エラーのコストが高い分野のワークフローを最適化することだ。この分野においては、AIの幻覚を許容できないため、当社は、人間のエージェントを介入させている」とボルーフルーシャンは述べている。
彼は、会社の収益について明言を避けたが、AppliedAIが過去1年間で400万ページ以上の米国の医療記録を処理したと述べた。
ブルームバーグによるとAppliedAIは、2022年にもG42やドバイのマクトゥーム家から4200万ドル(約64億8100万円)を調達していた。ボルーフルーシャンは、フォーブスに対し、新たな資金をAIツールの開発や米国・欧州市場での顧客拡大に充てると説明した。
今回のAppliedAIによる調達ラウンドは、ベッセマー・ベンチャー・パートナーズにとって初のUAEでの投資となった。「業務の自動化を、より迅速かつ低コストで実現するAppliedAIのテクノロジーは、人間の関与を維持している点が特徴的だ」と、ベッセマーのバイスプレジデントであるソフィア・ゲラはフォーブスに語った。
(forbes.com 原文)