エコセレスは、フィンランドのNeste(ネステ)のような業界の大手と比べるとまだ規模が小さな会社だが、同社の会長を務めるマッティ・リーヴォネンは、同社が今後、業界で最も高い生産効率を持つことで他社と差別化していくと述べている。
ネステの元社長兼CEO、リーヴォネンは、エコセレスが今年末までに、マレーシアの最新技術を備えた新工場を稼働させて、その目標に近づくと語る。マレーシアはインドネシアに次ぐ世界第2位のパーム油の生産国であり、同社は、そのパーム油の廃棄物をSAFに活用するという。
中国の江蘇省に工場を持つエコセレスは、マレーシア・ジョホール州に建設した新たな工場の稼働により、年間のSAF生産量を2023年の10万トンから約70万トンに増加させると見込んでいる。この増産により、エコセレス製SAFの世界市場シェアは、2024年の20%から30%以上に拡大することになる。国際航空運送協会(IATA)は、クリーンなジェット燃料の生産量が2025年に210万トンに達すると予測している。
2008年に香港で唯一のガス供給会社であるホンコン・チャイナガスの研究開発プロジェクトとして始動したエコセレスは、2021年に親会社から分離し、JPモルガンのアジア部門のメンバーが共同設立したケロジェン・キャピタルが参加したシリーズAラウンドで1億800万ドル(約160億円)を調達した。ホンコン・チャイナガスは、2023年にエコセレスの持ち株の21%をベインキャピタルに売却したが、この取引におけるエコセレスの評価額は約15億ドル(約2280億円)とされていた。
欧州でIPOを視野に
ブルームバーグが1月に報じたところによると、エコセレスは来年ヨーロッパでの新規株式公開(IPO)を検討しており、その際の企業価値は約50億ドル(約7600億円)に達する可能性があるという。同社は、このIPOで5億ドル(約800億円)から10億ドル(約1500億円)を調達する可能性があると報じられたが、エコセレスはコメントを控えている。米エネルギー省は、SAFが現状で航空業界の脱炭素化を実現する「唯一の実行可能な解決策」だとしており、この分野で活動するエコセレスのような企業の数は増加している。国際エネルギー機関(IEA)によると、航空業界は世界のCO2排出量の約2.5%を占めているが、航空需要の増加に伴いその割合はさらに上昇する見通しだ。