宇宙開発企業Axiom Space(アクシオム・スペース)創業者のカム・ガファリアンが設立したXエナジーは、メリーランド州ロックビルを拠点としている。同社は、直近の2つのラウンドで調達した合計7億ドル(約1100億円)を用いて、承認プロセスを完了させ、最初の原子炉を化学大手ダウ・ケミカルがもつテキサス州の工場に建設する計画だ。
累計調達額が約11億ドル(約1670億円)のXエナジーは、ピッチブックのデータによると、SMRの開発を手掛ける45社のスタートアップの中で最も資金力のある企業となっている。しかし、ビル・ゲイツが支援するTerraPower(テラパワー)も累計10億ドル(約1500億円)を調達しており、資金面では匹敵する。
Xエナジーは、ウランをセラミックと黒鉛で覆った燃料ペレットを使用する「ペブルベッド型」と呼ばれる小型原子炉の商用化を目指している。この原子炉の強みは、万が一、炉のシステムに異常が発生した際にも、核燃料が露出することがなく、炉心溶融が発生しにくいことだとされている。
さらに、この原子炉はトレーラーに積載できるほどのサイズで、工場で組み立てた後に顧客のもとに完成品として配送することが可能だ。これにより、従来型の原子力発電所と比べて建設期間を大幅に短縮できる。
XエナジーCEOのJ・クレイ・セルは、今後2年半以内に米国原子力規制委員会(NRC)の設計認証を取得し、2030年代初頭までにダウ・ケミカルの原子炉を稼働させることを目指している。
SMRの開発者たちは、この原子炉が従来よりも安全で、建設が迅速かつ低コストになると主張してきたが、こうした約束はまだ実現していない。2023年には、米国で最初に建設される予定だった、上場企業ニュー・スケールによる6基のSMRプロジェクトが、建設費の高騰を理由にユタ州の電力会社によってキャンセルされた。このプロジェクトの費用は、2021年時点では53億ドル(約8000億円)と見積もられていたが、93億ドル(約1兆4000億円)にまで膨らんでいた。
Xエナジーも、コストの上昇を認めている。同社は、2023年に米エネルギー省(DOE)に宛てた申請書類で、ワシントン州の電気事業者であるエナジー・ノースウエスト向けに建設する原子炉のコスト見積もりを当初の約2倍にあたる、47億5000万ドル(約7203億円)から57億5000万ドル(約8720億円)のレンジに引き上げた。Xエナジーは、その理由にインフレによる資材価格の高騰やサプライチェーンの混乱を挙げていた。