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海外

2025.02.03 08:00

ネパールから世界へ、AIで「コンプライアンス対応」を支援するSecurityPalの挑戦

Shutterstock.com

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ハイテク企業が新たな顧客と契約を結ぶ際には、その企業がセキュリティやコンプライアンス要件を満たしていることを顧客や規制当局に開示する必要がある。そのプロセスは、多くの場合、数百にも及ぶ質問リストに回答することを求められるもので、「どのようなデータを収集し、どこに保管しているのか?」「そのデータを人工知能(AI)モデルに使用するのか?」「データセンターには有刺鉄線があるか?」「従業員には身元調査を実施しているか?」といった質問に答える必要がある。

この面倒なタスクに対処するために、多くのハイテク企業が頼りにしているのが、ネパールの首都カトマンズにオフィスを構えるスタートアップのSecurityPal(セキュリティ・パル)だ。同社では、約180人の社員が、専用のソフトウェアと米国との時差を活かして、こうした質問の処理を迅速かつ低コストで行っている。SecurityPalの創業者でCEOのプカー・ハマルは、AIアシスタントと人間の専門知識を組み合わせることで、最適なサービスを提供できると主張する。

SecurityPalのアナリストたちは、企業からの申込みを受けて4〜6週間をかけて、セキュリティ関連の調査や会計監査のための回答を詳細に整理したナレッジライブラリを作成する。その後、企業から質問票が届くと、通常24時間以内に回答を仕上げて送り返す。さらに、顧客のデータをもとに、セキュリティ対策のベストプラクティス(たとえば、サイバー攻撃への対応手順のテスト頻度など)を提案することも可能だ。

SecurityPalは、創業から4年以上の間に200万件以上の質問を処理したという。また、企業ごとの契約額は数十万ドル規模で、数百万ドルに及ぶ契約もある。これにより、同社の収益は過去2年間で3倍に成長し、現在の年間収益は推定1000万ドル(約15億円)を超えている。 SecurityPalは、2022年にトランプ政権の暗号資産とAIの政策責任者に任命されたデービッド・サックスが創業したクラフト・ベンチャーズが主導したシリーズAラウンドで2100万ドル(約32億5000万円)を調達し、評価額は1億500万ドル(約162億円)に達していた。このラウンドにはアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)も参加した。

同社は、このようなニッチな領域のサービスを手掛ける企業ではあるが、AI業界のトップ企業の間で急速に市場を拡大した。SecurityPalがこれらの業務の大半をネパールで行っていることも、同社が注目すべき企業となった理由の1つに挙げられる。IT業界では、低コストのオフショア人材を活用するのは珍しいことではなく、AI分野においてもデータのラベル付を請け負うScale AI(スケールAI)のように大量の海外の契約スタッフを雇い、急成長を果たした事例がある。
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編集=上田裕資

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