養蜂業界団体が発表した調査によると、今冬だけで数百万匹のミツバチが死に、その損失率は50%を超え、経済的損失は1億3900万ドル(約210億7400万円)以上に上るという。この調査は234の養蜂家を対象としたもので、カリフォルニアのアーモンド栽培シーズン作業開始直前に公表された。これは全米の約300万のセイヨウミツバチのコロニーをトラックで運び、受粉させる必要がある大規模な作業だ。
「いま何が起こっていて、どれほど深刻な事態になるのかを突き止めようと、まさにパニック状態です」と語るのは、調査に参加した団体の1つであるProject Apis m.(セイヨウミツバチのラテン名であるApis melliferaに由来する)のエグゼクティブディレクター、ダニエル・ダウニーだ。養蜂家たちは冬が明けて事業を再開した際、コロニーの半数以上のミツバチが死んでいるか行方不明になっていることを知り、1月下旬までには原因を探るため研究者たちに協力を求めていた。
最も緊急性が高いのはアーモンドだが、その後もブルーベリー、チェリー、クランベリー、リンゴといった果物を受粉させるためにミツバチが必要になる。原因不明のミツバチ大量死は、消費者にとっては店頭の品薄や価格上昇というかたちで影響がおよぶ可能性がある。
American Beekeeping Federation、American Honey Producers Association、Adee Honey FarmsおよびProject Apis m.を代表する研究者らによれば、本年初めの損失を加えた今冬の損失として、多くの養蜂家のコロニーが70~100%に達する壊滅的被害を受けたという。そのため、一部の養蜂家は事業継続が危ぶまれ、作物を栽培する側は受粉用のミツバチを確保しようと奔走している。
テキサス州レナードの商業養蜂家、ブレイク・シュックは全国の養蜂家から電話を受けているといい、その中には「事業を閉鎖しなければならないかもしれない」という切迫した声も多いという。
「業界全体が何が起きているのかを把握しようとして必死です。とても恐ろしい状況だと思います」とシュックは語る。
研究者によると、今回の症状は2007~2008年に起こった蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder)と似通っている。当時はミツバチが突然コロニーから消え失せる現象が報告されていた。最近の現地調査でも、豊富なハチミツが残されているにもかかわらず、卵や幼虫、蛹がわずかに残っているだけで、成虫のミツバチがほぼいなくなっているコロニーが多数確認されている。
シュックは「今回の損失は以前の蜂群崩壊症候群よりも深刻です」と述べる。「当時は平均損失率が15%だったのが突然45%に跳ね上がりました。今はその45%からさらに増えているのです」