都会のハチは郊外や田舎のミツバチよりもストレスフルで不健康

花の上にとまるクマバチの一種、ケラティーナカルカラータ(Sandra Rehan / York University)

大都市のハチは、郊外や田舎に住む仲間たちと比べて多くのストレスを経験し、その結果、寄生生物の負荷は高まり、微生物叢は変化し、近親交配は増えている。

大都会での生活はストレスが溜まる。それは野生のハチのように小さな動物にとっても同じらしいことをカナダ・トロントのヨーク大学を拠点とする研究チームが最近の研究で明らかにした。チームは、野生のハチが受ける環境ストレス要因が田舎、郊外および都市部でどう異なるかを理解するために共同研究を行った。その結果、大都市に住む野生のハチは、郊外や田舎地域に住む姉妹たちと比べて近親交配が多く、病原体や寄生生物を多く保有していることがわかった。

たとえどんなに小さなハチであっても、その体表や体内に自然に生息する細菌、菌類、ウイルスおよびそれらの遺伝子が大量に集まった微生物叢(マイクロバイオータ)のための、小さな移動型生息地と考えることができる。密集した都市部や分断化した居住環境に住むハチの微生物叢を調べることによって、ハチたちの微小な同乗者たちの集合にも違いがあることを研究チームは発見した。そのような変化は、ハチの健康に影響をおよぼし、食糧や営巣地さらには交尾の相手を見つけることを難しくする。

茎に止まっているCeratina calcarata(クマバチの一種)(Sandra Rehan / York University)茎に止まるクマバチの一種、ケラティーナカルカラータ(Sandra Rehan / York University)

本研究を行うために、チームは野生のCeratina calcarata(ケラティーナカルカラータ、クマバチの仲間)180匹を採集した。彼らはトロント地域固有の小さな野生のハチだ。つまり、例えば彼らよりずっと大きくて魅惑的な親戚であるミツバチほど人間に管理されていないということになる。

研究者らは、全ゲノム解読を行って、ハチの集団遺伝子に関する手がかりを探るとともに、メタゲノム(環境あるいは標本内の多数の個体ゲノムの集合)および微生物叢を調べ、トロント大都市圏を横断して環境ストレス要因の影響を評価した。

「私たちの研究は、現在知られている中で、都市部に住む野生単独性ハチの全ゲノム解読、集団遺伝子およびメタゲノム分析を行った初めての例で、ハチ同士の複雑な関係、メタゲノム相互作用および密集した都市景観に着目しました」と本研究の上席著者で、ヨーク大学生物学准教授のサンドラ・リーアンはいう。

「このアプローチは、土地部に住む野生のハチの健康全般を評価する手段を提供するだけでなく、広い範囲の野生生物や景観にわたって応用できます」とリーアンは語る。

本研究の過程で研究チームは、たとえ遺伝子的な相違がなくても、ハチの微生物叢と栄養資源に有意な環境的相違が見られることを明らかにした。
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翻訳=高橋信夫

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