ロシア軍は攻撃せざるを得ない。なぜなら、クレムリンの戦争目的が本質的に攻撃的なものだからである。第一には、ウクライナ東部をできるだけ早く、できるだけ多く獲得するというものだ。
だとすればウクライナ軍は、地雷を敷設し、大砲の照準をキルゾーン(撃破区域)にあらかじめ合わせ、ドローンを武装させ、あとは、砲弾で穴だらけの中間地帯を敵部隊が越えようとしてくるのを待ち構えていればいい。「ウクライナの経験豊富な部隊はロシアの攻撃を非常に効果的に撃退しています」とコスチャンティンも述べている。
ロシアと異なり、ウクライナはこの戦争に、そこまで攻撃行動を必要とせずに勝利する方式がある。ウクライナ軍がロシア軍の人員を大量に殺害し、装備を大量に破壊し、士気を大幅に低下させていくことで、ロシア軍を
崩壊させる。そして、敵が崩れ出してから初めて、塹壕から出て前進する、というものだ。
これには先例がある。2022年秋、ロシア軍は、全面戦争初期のキーウへの攻勢に失敗してひどく消耗していた。ウクライナ軍は入念な偵察によって、北東部ハルキウ州ハルキウ市周辺のロシア側前線の一部に弱点を見つけた。ウクライナ軍屈指の数個旅団がそこを突いてロシア軍の防御線を突破し、疲弊したロシア軍にパニックを引き起こした。
ロシア軍は退却した。ウクライナ軍は前進し、ハルキウ州一帯の大部分を瞬く間に解放した。
この反転攻勢で最も鮮やかな機動のひとつを行ったのが、ほかならぬ第92強襲旅団だった。当時は改編前で機械化旅団だった第92旅団は、ハルキウ州のプリシブ村からクプヤンシク市まで、90kmほどのルートを迅速に進軍した。クプヤンシクはいまもなお自由を保っている。
ウクライナ軍による2022年の反攻が成功したのは、攻勢の前にそれよりかなり長期間の防勢作戦によって、ロシア軍に大きな損害を与えていたからだ。一方、ウクライナ軍が2023年、南部で行った反攻では、それに先立って長い膠着状態が続いていたため、ロシアの野戦軍は十分な時間をかけて前線部隊を補強し、塹壕を掘り、地雷を敷設することができた。
ウクライナ軍によるこの反攻が失敗したのは当然の結果だった。