しかし、ベゾスが設立したブルーオリジンは、長年の試行錯誤を経て、ようやく反撃のチャンスを掴もうとしている。同社の大型ロケット「ニューグレン」は、1月13日に予定されていたフロリダ州のケネディ宇宙センターからの初の打ち上げを延期したものの、1月16日、 無事初打ち上げに成功した。
宇宙業界や政府の多くの関係者が、同社のロケットに期待を寄せている。彼らは、ブルーオリジンがスペースXによる米国の衛星打ち上げ市場の独占状態を打破することを望んでいる。
「宇宙業界は、スペースXとは別の選択肢を持ちたがっている」と、調査会社クイルティ・スペースのアナリストのケイレブ・ヘンリーは述べている。
ブルーオリジンの打ち上げは、トランプ次期大統領が間もなくホワイトハウスに復帰しようとするタイミングで予定されていた。トランプは、1期目の大統領時代にベゾスが所有するワシントン・ポストが自身に関する否定的な報道をしたことを理由にベゾスを攻撃していた。トランプは現在、自身の右腕のマスクとともに、政府の支出や規制に関する大幅な改革を約束しており、これがブルーオリジンの政府契約に影響を与える可能性が懸念されている。
「速さを優先し失敗を厭わない」スペースXと「遅くても着実」なブルーオリジン
ベゾスは、ブルーオリジンをスペースXの「速さを優先し失敗を厭わない」という姿勢とは対照的な、「遅くても着実」な選択肢に位置づけている。同社のモットーは「Gradatim Ferociter(一歩一歩、猛烈に歩みを進める)」というものだ。しかし、これまでのところ、スペースXのスピードに、同社は大きく引き離されている。過去10年間でスペースXが前例のないレベルで打ち上げペースを加速させた一方、ベゾスの会社やボーイングとロッキード・マーティンの合弁会社のユナイテッド・ローンチ・アライアンスなどは、出遅れている。宇宙分野のアナリストのジョナサン・マクドウェルによれば、スペースXのファルコンロケットは2024年に133回の打ち上げを成功させ、米国の打ち上げの145回の大半を占め、世界全体の263回のうちの半分以上を占めていた。
しかし、2016年に初めて発表されたブルーオリジンのニューグレンロケットは、スペースXのファルコン9の強力な競争相手になることが期待されている。このロケットは、ファルコン9と同様の2段式の大型ロケットで、第1段は再利用を目的として地球に帰還する設計だ。ブルーオリジンによれば、ニューグレンの巨大なノーズコーンには、ファルコン9の2倍の貨物スペースが設けられており、エンジンは2倍のペイロードを運ぶよう設計されている。
また、ブルーオリジンは顧客に対して、スペースXを上回る価値を提供しようとしている。ファルコン9は、1回の打ち上げに約7000万ドル(約110億円)を顧客に請求しているが、ブルーオリジンは約1億1000万ドル(約171億円)を請求している。これは、同社が約50%の追加のコストで約2倍の衛星を運搬可能なことを意味する。