宇宙

2025.01.15 18:00

直径が冥王星の約半分、不自然に大きい衛星カロンが誕生したメカニズム

冥王星(右下)と衛星カロン(左上)の合成画像。2015年7月14日にNASA探査機ニュー・ホライズンズが撮影(NASA/JHUAPL/SwRI)

冥王星(右下)と衛星カロン(左上)の合成画像。2015年7月14日にNASA探査機ニュー・ホライズンズが撮影(NASA/JHUAPL/SwRI)

冥王星には衛星が5つあるが、カロンは他の衛星とは際立って異なる。直径が冥王星の約半分で、「親惑星に対する大きさの割合が、太陽系内で知られている中で最大の衛星」となっていると、NASAは指摘している。では、どのようにして冥王星はこれほど大きな衛星を持つに至ったのだろうか。今回の最新研究では「軽い接触(kiss)と捕捉(capture)」と呼ばれる特異なメカニズムが示唆されている。

カロンの誕生に関する「軽い接触による捕捉」の発想は、この衛星の形成に関する従来説からかけ離れたものとなっている。研究を主導した米アリゾナ大学は、1月6日付の声明で「寒冷な氷天体の構造強度という、惑星科学者が数十年にわたって見過ごしてきた点を考慮することにより、研究チームはまったく新しいタイプの宇宙衝突を発見した」と述べている。NASAの博士研究員で、米アリゾナ大学月惑星研究所(LPL)のアディーン・デントンが筆頭執筆者である今回の最新論文は、6日付の英科学誌Nature Geoscienceに掲載された。

衛星形成のメカニズム

科学者は長年、冥王星の衛星について考察をめぐらせてきた。カロン以外の4衛星、ニクス、ヒドラ、ケルベロス、スティクスは、カロンに比べてはるかに小さい。1つの説として、準惑星の冥王星に巨大な天体が衝突して現在の衛星系が形成されたというのがある。天体衝突で生じた破片によって後に衛星が形成されたとする仮説で、「ジャイアント・インパクト(巨大衝突)説」と呼ばれる。

冥王星とカロンを調査している研究者は長年、地球が月を獲得したメカニズムとの比較を行っている。NASAによると、約45億年前の地球に火星ほどの大きさの天体が衝突して「融解・気化した破片が大量に宇宙空間に放出され、月を形成した」とする説が最も有力とされている。だが、冥王星がカロンを獲得したのはこのメカニズムではないことを、デントンによる今回の研究は示唆している。「冥王星とカロンは、それとは異なる。すなわち、より小型かつ低温で、主に岩石と氷でできている」と、デントンは説明する。「今回の研究では、これらの材料の実際の強度を考慮すると、完全に予想外のことが明らかになった」

研究チームが実施した一連の衝突シミュレーションの結果、原始状態のカロンが冥王星にぶつかる(軽く接触)と、2つがまるで雪だるまのようにくっつき合う(捕捉)ことが明らかになった。2つの天体はほぼ原型を保ったままで、後に分離して冥王星と最大の衛星カロンになったと考えられる。このコンピューターモデルは、冥王星を公転するカロンの軌道の状態とも一致していることから、カロンの起源に関する理路整然とした有力な説を示すものとなっている。


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翻訳=河原稔

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