トランプとマスクの思惑
「スペースXがこれまで多くのことを成し遂げた一方で、ブルーオリジンがほとんど何もしていないという評価を下すのは簡単だが、ここにはもっと複雑な問題が隠れている」と、宇宙コンサルティング企業BryceTechのカリッサ・クリステンセンCEOは述べている。ブルーオリジンの取り組みは、米国の不透明な政治的状況の中で行われている。トランプは、政府の支出と規制を削減するための政府効率化省(DOGE)の取り組みをマスクに主導させている。規制緩和はすべての宇宙分野の企業にメリットをもたらすが、マスクの会社の競合は、スペースXが優遇されることを懸念している。
その象徴的な例が、ビリオネアのジャレッド・アイザックマンがNASAの長官に指名されたことだ。彼が経営するShift4 Payments(シフト4ペイメンツ)はスペースXに出資しており、彼自身もスペースXの「ポラリスドーン」ミッションで民間人として世界初の宇宙遊泳に成功した。
また、昨年3月にアイザックマンは、NASAが月面着陸機の開発に、スペースXとブルーオリジンの両方を選定したことに疑問を呈していた。
しかし、ベゾスは、マスクがトランプ政権内での影響力をスペースXの利益のために使わないと信じているようだ。
ベゾスは、12月のニューヨークタイムズのカンファレンスで「マスクは、自身の会社を有利にし、競争相手を不利にするために政治力を行使しないと話しているが、私は、この発言を額面どおり受け取っている」と話していた。
いずれにしろ、ベゾスは今後の4年以上先を見据えている。彼は、ブルーオリジンが宇宙での製造と採掘を推進し、「地球を居住と軽工業のゾーン」にする未来を構築することを望んでいる。ベゾスは、将来的にブルーオリジンの事業規模が、アマゾン以上のものになると考えているが、そのためには、宇宙への到達コストを引き下げることが必須になる。
「我々は宇宙に行く方法を知っているし、月に着陸する方法も知っているが、これを100倍安くする必要がある。それによって、人類にとって本当の未来が訪れる」とベゾスは昨年9月に宇宙関連YouTuberのティム・ドッドに語っていた。
(forbes.com 原文)