現在も木星を周回している総費用12億ドル(約1750億円)のNASAの無人探査機ジュノー(Juno)が収集した最新の観測データにより、木星のガリレオ衛星の1つであるイオは最近、太陽系における観測史上最大規模の火山噴火を起こしたことが明らかになった。地球の衛星の月ほどの大きさしかないイオは、ジュノーの科学チームの想像をはるかに超えるほど高温で、火山活動が活発な状態にある。
NASAのジュノー探査計画の主任科学者で、米サウスウェスト研究所(SwRI)に所属するスコット・ボルトンは、オーストリアのウィーンで開催された欧州地球科学連合(EGU)2025年総会の席上で取材に応じ、これほど多数の火山が全て同時期に爆発し、何百もの火山が継続的に活動しているのは、太陽系でこれまで確認されたことがないと語った。イオは至る所に火山があると、ボルトンは表現する。

ジュノーは、これまでの探査機ではできなかったまったく新しいことをいくつか達成できた。
極軌道(極の上空付近を通る周回軌道)にあるため、イオの極域を初めて観測し、両極の至る所に火山があることを確認できたと、ボルトンは指摘する。南極にわたる同じ領域で複数の噴火が起きていたが、これは1カ所のマグマ溜まりが何らかの形で活性化され、数カ所の噴火が全て同時に発生したことを示唆しているという。
イオが木星を公転する軌道は、完全な円軌道から大きくずれている。
軌道の一方の側では、もう一方の側にある時に比べて木星に少し近くなると、ボルトンは説明する。木星がイオに及ぼす引力は、木星に近い側のほうが木星から離れた側よりも少し大きくなるため、イオの形状が球から歪んだ形に変形する。これにより、イオ自体が木星の重力によって継続的に圧縮されるため、イオの内部が非常に高温になって融解し、最終的に噴出すると、ボルトンは続けた。
イオのような噴火活動が活発な火山衛星の研究が重要である理由は何だろうか。