ゼレンスキーは先週、ウクライナを訪問したドイツのオラフ・ショルツ首相に、シャヘドのクローンのような新たな長距離攻撃ドローンをお披露目した。問題は、ウクライナはこうしたドローンを必要な数だけ生産できるのか、来年計画する3万機の製造というのは実現不可能なただの願望にとどまるのかという点だ。
1年前、ウクライナのドローンメーカー、ターミナル・オートノミーは、組み立て式家具のような方式で簡単に大量生産できるように設計されたAQ-400「サイズ」自爆ドローンを月に500機製造する準備を整えていた。しかし明らかに実現できておらず、生産規模を拡大したいと考えているほかのメーカーも政府から必要な資金を得られていない。今年7月、ウクライナは初めてロシアよりも多くの長射程ドローンを発射した(520機対426機)が、増産ペースはロシアのほうが速いようだ。
ウクライナでも政府の最高レベルが攻撃ドローンの生産を最大限に引き上げるよう求めているので、生産数は近く急増し始めるかもしれない。
もっとも、量がすべてではない。前ウクライナ軍総司令官のバレリー・ザルジュニー駐英大使は先月、テレグラムへの投稿で、新興テクノロジーについて自説を述べ、国全体の戦略的な軍事インフラや民間インフラの無力化を目的としたタイプの戦争について論じている。こうした戦争では、撃墜されたり電子戦で目標からそらされたりする大量のドローンよりも、電子戦を無効化し、目標を正確に標定して破壊できる効果的なAI(人工知能)を搭載したドローンのほうが価値がある。
ウクライナのミハイロ・フェドロウ副首相兼デジタル変革相はロイター通信に、ドローンの発射技術やドローンとの通信も非常に重要だと語っている。「ロシアは(ウクライナの)ドローンの発射に対する監視体制を向上さていて、すばやく対応して発射地点を攻撃してきます。こうした微妙な問題のため、発射手段や接続方法を変更する必要があります」
そこから推測すると、ウクライナの長距離攻撃ドローンは目標の座標があらかじめ入力されるのでなく、発射後も操縦士の制御下にあり、方向の修正などができるのかもしれない。操縦士が攻撃前に目標を確認できるようにカメラやセンサーも搭載している可能性もある。この方式は、衛星画像から目標を選び出すのより格段に有効だ。