マッハ10で落下しながらきれいに分離し、下方のエリアを均一に覆う「空力学ダーツ」という挑戦は並大抵のことではない。理想的な大きさ、形、重さのフレシェット弾を完成させるには、おそらく何度も実験を繰り返す必要があるだろう。オレシュニクが発射されたのは今回が初めてだった。
フレシェット弾の雨は旧来の榴散弾と同じくらい有効で同じくらいの広さの範囲を狙えるかもしれないが、核攻撃と比べられるようなものではない。
欧州を脅迫
西側のコメンテーターのなかには、プーチンの話を額面どおりに受け取って、ロシアはこの恐るべき新型兵器で欧州諸国の中枢部を攻撃したり、西欧にある北大西洋条約機構(NATO)の空軍基地を破壊したりしようとするかもしれない言う人もいる。もしそうするつもりなら大量のミサイルが必要になる。ルイスによると、ロシアはこれまでのミサイル生産量に基づくとオレシュニクを年間数十発生産できる可能性がある。ただし、これはオレシュニクの生産を優先した場合の話だ。ロシアのミサイル産業界が目下、なるべく多くのミサイルを生産しようと躍起になっていることを踏まえると、これほど効果が小さい兵器に多大なリソースを振り向けるというのは疑問に思える。
「ここで問題にされているのはウクライナではありません」とルイスは言う。「ドイツ、フランス、そして英国を脅迫しているのです」
ルイスは、欧州諸国の首都へのオレシュニクの到達時間を示したロシアメディア作成の図表を引き合いに出している。
Russian media released a new graphic showing Oreshnik missile flight times to major cities in Europe pic.twitter.com/Ry7yLymK2n
— Preston Stewart (@prestonstew_) November 22, 2024
むしろプーチンが、ウクライナを連夜攻撃している低コストのドローンの大量生産でなく、途方もなく高価でたいした効果のないミサイルの開発・製造に投資してくれたほうが、ほかの国々にとっては都合がいいかもしれない。こうしたドローンはオレシュニクの子弾と同程度の威力をもつ弾頭を搭載し、SFめいた人工隕石よりもはるかに大きな脅威になりかねないものだ。
(forbes.com 原文)