欧州

2024.12.06 09:30

ロシア版「神の杖」? プーチンが誇張するオレシュニク弾道ミサイルの脅威

オレシュニク弾道ミサイル(Shutterstock.com)

第一次世界大戦中には、航空機からフレシェット弾の束がばらまかれたこともあった。米軍はベトナム戦争で空中投下型のいわゆる「レイジー・ドッグ弾」を試している。ピウデンマシュの敷地内で見つかった残骸にフレシェット弾が使われた形跡はなく、子弾はたんなる金属の塊だったようだ。

マッハ10で落下しながらきれいに分離し、下方のエリアを均一に覆う「空力学ダーツ」という挑戦は並大抵のことではない。理想的な大きさ、形、重さのフレシェット弾を完成させるには、おそらく何度も実験を繰り返す必要があるだろう。オレシュニクが発射されたのは今回が初めてだった。

フレシェット弾の雨は旧来の榴散弾と同じくらい有効で同じくらいの広さの範囲を狙えるかもしれないが、核攻撃と比べられるようなものではない。

欧州を脅迫

西側のコメンテーターのなかには、プーチンの話を額面どおりに受け取って、ロシアはこの恐るべき新型兵器で欧州諸国の中枢部を攻撃したり、西欧にある北大西洋条約機構(NATO)の空軍基地を破壊したりしようとするかもしれない言う人もいる。

もしそうするつもりなら大量のミサイルが必要になる。ルイスによると、ロシアはこれまでのミサイル生産量に基づくとオレシュニクを年間数十発生産できる可能性がある。ただし、これはオレシュニクの生産を優先した場合の話だ。ロシアのミサイル産業界が目下、なるべく多くのミサイルを生産しようと躍起になっていることを踏まえると、これほど効果が小さい兵器に多大なリソースを振り向けるというのは疑問に思える。

「ここで問題にされているのはウクライナではありません」とルイスは言う。「ドイツ、フランス、そして英国を脅迫しているのです」

ルイスは、欧州諸国の首都へのオレシュニクの到達時間を示したロシアメディア作成の図表を引き合いに出している。
これはほとんど、単純な威嚇の試みのようにしか見えない。実際のオレシュニクはプーチンが信じているらしいほど凄まじい兵器ではない。ロシアにはイスカンデル(これも核弾頭搭載可能だ)などほかの弾道ミサイルが何百発とあるが、ウクライナを服従させることはできていない。プーチンが大々的に宣伝した「極超音速ミサイル」キンジャールにしてもそうだ。

むしろプーチンが、ウクライナを連夜攻撃している低コストのドローンの大量生産でなく、途方もなく高価でたいした効果のないミサイルの開発・製造に投資してくれたほうが、ほかの国々にとっては都合がいいかもしれない。こうしたドローンはオレシュニクの子弾と同程度の威力をもつ弾頭を搭載し、SFめいた人工隕石よりもはるかに大きな脅威になりかねないものだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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