命中精度の問題
ドニプロへのオレシュニクの攻撃では、かつて宇宙船やロケットを製造していたピウデンマシュ(旧名ユージュマシュ)工場が狙われた。死傷者は報告されておらず、低解像度の衛星画像ではクレーターや建物の損壊も確認できず、工場自体に大きな被害はないようだった。ピウデンマシュは過去にもロシア軍による攻撃を複数回受けている。Satellite images show Yuzhmash plant after Oreshnik strike
Sentinel images from November 24 reveal no significant damage to the plant days after the missile attack.
This contradicts Putin’s claim that the strike with a “new missile” had rendered the facility inoperative. pic.twitter.com/vYy4J4T7nz — NEXTA (@nexta_tv) November 24, 2024
米ジェームズ・マーティン不拡散研究センター(CNS)のジェフリー・ルイス博士は筆者の取材に、「建物はまだ立っています。攻撃で建物に多少、追加の被害が出た可能性はありますが、たいしたものではないようです」と話した。
オレシュニクによる攻撃の様子を捉えた映像によると、6個の弾頭からそれぞれ6個の子弾が放出され、各20kgかそこらの36個の人口隕石になって地上に降り注いだ。現時点で最良の推定によれば、RS-26の平均誤差半径(CEP)は90〜250mとされる。これは、目標を中心にこの半径の円内にミサイルの半数の着弾が見込めることを意味する。RS-26のCEPは爆風半径が数kmにおよぶ核弾頭なら十分な精度だが、数個の運動エネルギー弾頭の場合は十分でない。
According to the Ukrainian officials, ruЫЫia has launched ICBM for the first time.
— 𝔗𝔥𝔢 𝕯𝔢𝔞𝔡 𝕯𝔦𝔰𝔱𝔯𝔦𝔠𝔱△ 🇬🇪🇺🇦🇺🇲🇬🇷 (@TheDeadDistrict) November 21, 2024
An ICBM was launched from the Astrakhan Region and struck the Pivdenmash facilities in Dnipro City. pic.twitter.com/ouMv4O0NhP
仮に子弾1個がたまたま目標に命中すれば、どのくらいの被害が出るだろうか。おそらく、下向きに発射されたライフル銃弾のように、子弾はマッハ10で屋根と下の階を貫通し、地中深くに埋まってエネルギーを使い果たしたに違いない。
2000年代初頭、米国が似たような発想からトライデント潜水艦発射弾道ミサイルを迅速なグローバル打撃用の通常兵器に転用することを検討した際、想定していた目標は地下深くのバンカー(掩体)だった。高速の飛翔体は堅固なコンクリート製司令部壕や地下深くの施設にたたき込むのには最適だろう。一方で地表の目標に対しては有効性が下がり、結局、このアイデアは棚上げされることになった。
ルイスによれば、こうした命中精度の低さから過去の計画者たちは、着弾地点の散らばりに対処するためにペイロードは神の杖よりも「上空からの矢」、つまりフレシェット弾がよいと考えていたという。フレシェット弾は釘ほどの大きさの金属製矢弾で、これを高高度から数千本以上放ち、広範囲を飽和させるというアイデアだった。