米シアトルに本社を置く同社の最新の危機は、3四半期連続で期待外れの業績となったことから始まった。直近の2四半期では既存店の売上高と利益は減少している。こうした最近の収益不振は、2007年から2008年にかけての大不況で経済が衰退したとき以来、約15年ぶりのことだ。
ブルームバーグ通信の最近の報道によると、スターバックスが現在直面している状況は部分的にはインフレのせいでもある。同社は「高価格のコーヒー飲料に金を出したがらない客に苦慮している」と報じた。
これは何もスターバックスに限ったことではない。スターバックスに特有で、対処がより難しい問題は「かつては一貫していた店内体験が悪化していること」であり、「待ち時間は長くなり、客はオンライン注文を利用していない」と記事では指摘している。
スターバックスをめぐる議論は必然的に、1987年に10数軒そこらだった小さな地域チェーンをグローバル展開する大企業に育て上げたマーケティングの天才、ハワード・シュルツを中心に展開される。スティーブ・ジョブズがアップルに革新的な文化を植え付け、レイ・クロックがマクドナルドの魂であったように、シュルツは当初からスターバックスの番人だった。シュルツは2000年に引退したが、2008年の経済危機の際に最高経営責任者(CEO)として再登板した。現在もそうだが、当時、不況の中で高価格のコーヒーは贅沢品となりつつあり、スターバックスは疎まれつつあった。
ニューヨーク・タイムズの記事の論調はブルームバーグの最新の批判的なものとよく似ている。 「多くの人が、コーヒーとセットになっているライフスタイルはともかく、スターバックスのコーヒーを見捨てつつある。スターバックスの店舗を訪れる人は4%減り、店舗で客がモカカプチーノやチョコレートクロワッサンなどに払う額は前年比で平均3%減少した」
100億ドル(約1兆4765億円)に満たなかった年間売上高を230億ドル(約3兆3960億円)近くにまで成長させたシュルツは、2017年に2度目の引退をした。その後、新型コロナのパンデミックが発生し、混乱の最中の2022年にシュルツは2度目の復帰を果たした。自身が次期CEOに指名した元PepsiCo(ペプシコ)幹部のラクスマン・ナラシマンを育てることを目的に暫定CEOとしての復帰だった。だが今月、またもや動きがあった。取締役会で突然ナラシマンは退任し、メキシコ料理チェーンのChipotle(チポトレ)の元CEOで、2016年に苦境にあった同社を立て直したことで知られるブライアン・ニコルの起用を決めた。