「静電気をカットせよ」コーヒーをもっとおいしく入れる簡単な秘訣

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おいしいコーヒーの入れ方なら、すでにコーヒー愛好家が全部試した後で、未発見の裏ワザなどもうほぼ残っていないと思うかもしれない。しかし、ほとんどの一般的なコーヒー好きが知らないであろう、驚くほど簡単なコツがある。

まずそのコツとは何かを紹介し、それから根拠となる最新科学について説明しよう。目覚めの1杯により濃厚なコーヒーを楽しみたかったら、豆を挽く前に少量の水を吹きかければいい。それだけだ。

では、豆に水を吹きかけると何が起こり、なぜコーヒーがおいしくなるのだろうか。米オレゴン大学のクリストファー・ヘンドン准教授らの研究チームが材料科学の専門誌マターに発表した最新の論文によると、要は豆を挽く過程で生じる静電気が抑えられるからだ。

コーヒー豆を挽くと摩擦帯電が生じる。すなわち、豆同士がこすれ合って静電気が発生し、コーヒーの粉がダマになったり空中に舞い散ったりする。

ダマが混じっていると、注いだ湯がコーヒー粉の層を均一に通過せず、抽出にムラができる。すべてのコーヒー粉が均等に密集している状態が理想的だが、静電気はそれを妨げる。

ヘンドン准教授らの研究で、水が摩擦帯電をかなり抑えることが明らかになった。

研究チームは広範な実験を行い、コーヒー豆を挽く前に少量の水を加えると、エスプレッソ1杯に含まれるコーヒー固形分濃度が8.2%から8.9%に増加することを発見した。相対的に8.5%濃厚なコーヒーの出来上がりだ。

論文からは、研究チームが非常に楽しみながら実験を行ったことが伝わってくる。実験では31種類のコーヒー豆の水分含有量を測定し、コーヒーミルの設定や水温など、条件をいろいろと変えて結果を確認した。

さまざまな焙煎度合いで自家焙煎した豆も使用。豆と焙煎方法の組み合わせを何十通りも試し、焙煎後の水分量と豆を挽いたときに発生する静電気の量を測定した。すると、深煎りのコーヒーは通常、挽いた後の粒子がより細かくなり、粒子が細かいほど静電気が多く発生することがわかった。

正しい実験結果を得るため、研究者たちはそれはもうたくさんのコーヒーを飲む羽目になったが、科学には時として犠牲がともなうものだ。

実は、コーヒー豆に少量の水を加えるという手法は一部の専門家にはすでに知られており「ロス・ドロップレット・テクニック(RDT)」という名称もある(論文でも指摘されている)。ただ、その効果を裏づける精密な科学的論拠はこれまで判明していなかった。

論文は「水を数回吹きかけるだけで、ダマやチャネリング(湯通りが偏って抽出にムラができること)、抽出不足といった問題を解決でき、最高においしいエスプレッソの追求に役立つ(かもしれない)」と結論付けている。ほんの数滴の水で十分なので、試してみてほしい。

ただし、大事な注意事項が1つある。コーヒー粉を湯に浸すフレンチプレス方式で入れる場合は、この裏ワザを使っても効果はない。

それから、この研究はエスプレッソにのみ焦点を当てたものだという点も指摘しておこう。普通のコーヒーにも通用するのか? おそらく期待してよいだろうが、さらなる研究が必要だ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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