音楽

2024.08.03 11:30

「ドS」渋谷慶一郎が振り返る、アンドロイドオペラ・東京公演

『Android Opera TOKYO – MIRROR/Super Angels excerpts.』公演 (c)Kenji Agata

『Android Opera TOKYO – MIRROR/Super Angels excerpts.』公演 (c)Kenji Agata

音楽家・渋谷慶一郎によるアンドロイド・オペラ『Android Opera TOKYO – MIRROR/Super Angels excerpts.』が2024年6月18日、東京・恵比寿ガーデンホールで開催された。

2012年に初音ミクが主演のボーカロイドオペラ『THE END』を発表した渋谷は、やがてAIを搭載したアンドロイドによるオペラに取り組む。2017年にオーストラリアのアデレード・フェスティバルでそのプロトタイプを発表し、翌年東京で初演。その後も世界各地で公演を重ねていった。


今回の東京公演では、2022年のドバイ万博で発表したアンドロイドと仏教音楽・声明(しょうみょう)、そしてオーケストラのコラボレーションによる新作『MIRROR』を披露。公演を終えた渋谷に、作品に込めた意図や舞台裏を尋ねた。


「いつもコンサートのあとは機嫌が悪い僕ですが、今回は珍しく、すごく満足しました」。インタビューの席につくとまず、渋谷は公演をそう振り返った。

「大きな理由は、コンサートマスターの成田達輝くんが集めてくれた演奏家たちによる演奏のレベルが高かったことです。このプロジェクトでは自分は総合プロデュースする立場ですが、やはりミュージシャンとして、コンポーザーとして一番気になるのは演奏のクオリティなんです。4月から6月までパリのスタジオにこもってオーケストラスコア(楽譜)の修正とバージョンアップを行い、かなりいいものになった自信があったので、なおさら嬉しいですね」(渋谷)

開場する5分前まで、緊迫した空気のなかでぎりぎりまで音響のセッティングを追い込んでいたという。

6つの声を合成したアンドロイドの声とオーケストラの音、子供たちの合唱、高野山の僧侶たちによる声明、そして電子音。それらを精緻にチューニングすることの難しさは、音楽の専門家でなくても想像に難くない。しかし、これを限界まで追い込むことは、絶対に必要なことだった。
満足のいく公演だったと振り返る渋谷慶一郎。©Ayaka Endo

満足のいく公演だったと振り返る渋谷慶一郎。(c)Ayaka Endo

舞台は2部構成だった。少し長くなるがこの公演を理解してもらうために説明したい。

まず第1部「Super Angels excerpts.」は、2021年に新国立劇場の委嘱により初演された子どもたちとアンドロイドによるオペラからの抜粋だ。障がいの有無にかかわらずどんな子どもたちでも参加できるインクルーシブな合唱団であり、手話の表現で歌う「サイン隊」と声で歌う「声隊」により構成される「ホワイトハンドコーラスNIPPON」から29人の子どもたちが出演。舞台中央のアンドロイド・オルタ4とオーケストラの前で、視覚に障がいを持つ音大生バイオリニスト長野礼奈が演奏する。第一部「Super Angels excelpts.」。(c)kenji Agata

第一部「Super Angels excelpts.」。(c)kenji Agata

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文=青山 鼓

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