地域で、世界で、活躍するカルチャープレナーたち【後編】

「Forbes JAPAN」2023年11月号(9月25日発売)では、「カルチャープレナー」を総力特集。文化やクリエイティブ領域の活動によって、それまでになかった革新的なビジネスを展開し、豊かな世界を実現しようと試みる若き文化起業家を30人選出した。前編に引き続き、受賞者たちの革新的な取り組みを紹介していこう(順不同)。

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海藻由来のオリジナル和菓子で起業 「おもてなし」の精神で頂を目指す

三木アリッサ|Cashi Cake CEO

NYで生まれ9.11テロを機に日本へと居を移した三木は、帰国子女という生きづらさをバネに若くして研鑽を積んだ。大学在学中にプリザーブドフラワーのブランドを立ち上げ、楽天市場で1位を獲得。渋谷ヒカリエに実店舗をもつまでに成長させた。新卒入社したネスレ日本では史上初の女性マーケターとしてCRMを担当。その後も、日本酒ベンチャーや百貨店、イスラエル専門商社などさまざまな企業のプロジェクトに参加した。

「女性はどうしても結婚・出産とキャリアアップのタイミングが重なりがち。20代のうちに実力をつけ、キャリアを短縮することでどちらも叶えたいと思っていました」

2019年にロサンゼルスでフードテック事業を営むCashi Cake inc.を起業。食分野はまったくの素人であったが、アメリカ市場を徹底的に勉強して挑んだマーケティングは的中し、和菓子ブランド「MISAKY.TOKYO」は創業から1年で急成長。トップセレブのプロモーションに起用され、一躍その名を知らしめた。

だが、一見すると従来の和菓子のイメージとは異なる三木の「琥珀糖」には、否定的な意見やいわれのないバッシングも少なくなかった。

「ビーガン、グルテンフリーのほか、アレルギー対応や無着色、無添加にもこだわり、あらゆる食文化の人が食べられるように配慮していること。また、材料を複数の国から仕入れることで、さまざまな出身国の人が1箱で母国を共有できるような工夫があること。そうした日本ならではの“おもてなし”の精神を込めた和菓子で、世界中の人に愛され、未来に貢献するブランドであることを目指しています」

琥珀糖に用いる材料の海藻を突き詰めるうち、あらためて日本の水産加工技術が優れていることを知り、今年から海藻由来の乳酸菌でつくる機能性飲料「OoMee(ウーミー)」の開発にも着手。

「目標は日本人女性起業家初のナスダック上場。外国人・女性・未経験というマイノリティだらけの私のアメリカでの成果を前例に、日本の子どもたちがどんな高い山にも挑戦できる未来をつくりたい。私が今登っているエベレスト級の山の頂を見てみたいし、もっと多くの挑戦者にも出会いたい」 日本が誇るホスピタリティと技術を「食」に込め、世界最高峰へと駆け上がる。

着物と帯地をシューズやシャツへ 現代人に寄り添い大胆にアレンジ

田尻大智|Relier81 代表

2018年にレディース向けシューズブランド「Relier81(ルリエ エイトワン)」を京都で創業。シューズには不向きとされてきた着物地や帯の生地の強度を高めるなどして独自のサンダルを開発し、日本製アパレル「UNITED TOKYO」や西陣織メーカー「田村屋」などとコラボレーション販売を行ってきた。
 
設立5周年を迎えた23年、リブランディングを実施し、着物の上に羽織る道行を活用したユニセックスの開襟シャツや、踏み台に着想を得たバッグなど商品展開を広げた。受注拡大を見据えて生産体制を整え、全国のデパートでポップアップストアを展開。伝統的な和柄だけでなく現代の暮らしに合わせてモダンな柄も選定し、海外展開の機運を狙う。「海を渡るという創業当初からの目標を実現させ、京都から世界を目指す起業家や職人と結束し、新しい伝統の形を発信していきたい」。 
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文=眞板響子、督 あかり

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年11月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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