CULTURE-PRENEURS 30
CULTURE-PRENEURS 30
CULTURE-
PRENEURS 30
カルチャープレナー30
About
カルチャープレナーとは
カルチャープレナー=文化起業家
文化やクリエイティブ領域の活動で新ビジネスを展開し、豊かな世界を実現しようとする人たち。
カルチャープレナーとは、文化起業家のこと。英語のCultural Entrepreneursを元にした造語であり、新しい概念だ。
今、日本各地では、職人によって受け継がれてきた伝統技術や工芸品などが、担い手不足や時代の変化に伴い、姿を消しつつある。しかしその一方で、我々が失いかけている文化資産の価値に気づき、自分たちの手で今に息づかせたいと立ち上がる若い起業家たちも多く現れている。
そんな「カルチャープレナー」たちの存在は、異業種との結合やニーズの掘り起こしによって、今後大きなムーブメントになるかもしれない。それは、これからの日本経済にとっても、新しい可能性となるはずだ。
9名のアドバイザリーボードの協力を得て、これからの成長が期待できる45歳以下の文化起業家を中心に候補者を推薦してもらい、編集部の審査によって30組を選出した。
CULTURE-PRENEURS 30
CULTURE-PRENEURS 30
Winners
受賞者一覧
「建築の民主化」をビジョンに掲げ、2017年にVUILDを創業。専門スキルや資格がなくても、すべての人が設計者としてつくることができる社会を目指し、建築設計のほか、3D木材加工機「Shopbot」、デジタルで木製家具のデザインから加工まで完結するクラウドサービス「EMARF(エマーフ)」などを手がける。芝浦工業大学工学部建築学科を卒業し、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科エクス・デザイン領域でデジタルファブリケーションを専攻した。2018年ウッドデザイン賞ソーシャルデザイン部門コミュニケーション分野・林野庁長官賞(優秀賞)、2019年Under 35 Architects exhibition Gold Medal賞、2020年グッドデザイン金賞、2021年DFA Design for Asia Awards、2022年Archi-Neering Design AWARD 2021(第2回AND賞)最優秀賞など、受賞多数。
モデル、ファッションインフルエンサーとして世界で活躍する、姉のAYA、妹のAMIによる双子ユニット。15歳のときに原宿でスカウトされ、バイト生活をしながらチャンスを掴み、モデルやDJの仕事でファン層を拡大。「FENDI(フェンディ)」「VALENTINO (ヴァレンティノ)」「DIESEL(ディーゼル)」などハイブランドのキャンペーンにも多く起用され、ピンクボブという印象的なビジュアルと独自のセンスを武器に、東京のミックスカルチャーを世界中に発信している。ファッションブランド「jouetie」のクリエイティブディレクターを13年にわたって務め続け、ブランドの人気を牽引。2019年には世界のファッション業界関係者2500人が選ぶ「T h e Fashion Awards 2019」において、日本人で初めて「NEW WAVE/Digital Influencer」部門(世界で活躍する若き才能100人)にも選ばれた。1988年生まれ。静岡県浜松市出身。
「対立のない優しい世界を目指して」を理念に掲げ、2018年21歳のときにTeaRoomを創業。
茶の湯文化を軸にしたプロデュース事業を主軸に、静岡市本山地域にある茶畑と工場を構え、日本茶の生産から販売までを手がける。
9歳のときに茶道裏千家に入門した茶歴は17年を超え、岩本宗涼という茶名で裏千家茶道準教授も務める。
「調和」を重んじる茶の湯の精神性を広げ、対立のない世界をつくるため、日々世界中を飛び回っており、今後アメリカとインドなどへもマーケット開拓予定。1997年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。
金沢美術工芸大学を卒業後、大手カメラメーカーのインハウスデザイナーとして新製品の企画に携わる。大量生産の仕組みに疑問を感じ、東日本大震災を契機に、2013年起業。「新価値の造形」を使命に掲げ、金沢でクリエイター集団「secca」を設立し、今年10周年を迎えた。伝統技法から最新テクノロジーまで、あらゆる技法や素材を掛け合わせ、工芸を巧藝と再定義した独自のものづくりを展開する。19年に石川樹脂工業との協業で生まれたテーブルウェアブランド「ARAS(エイラス)」は、100%リサイクルできる樹脂の新素材を使用。1000回落としても割れない食器だが、万が一破損した場合は生涯無償で交換できる。常に「なぜ今つくるのか」という問いを追求し、自社作品と協業プロジェクトによって表現する。
「文化を纏(まと)う」をコンセプトに、使わ「れなくなった」生地や、つくら「れなくなった」素材や技術を活用するD2Cブランド「renacnatta」。15歳でイタリア・ミラノに移住し、現地の高校やヨーロッパ・デザイン学院でデザインや広告コミュニケーションを学んだ大河内が、2016年にブランドを設立。イタリアンシルクと着物のデッドストックを使ったリバーシブルの巻きスカートから始まり、丹後ちりめんのワンピースや西陣織の日傘など、展開の幅を広げる。23年、1200 年の歴史がありつつ途絶えそうになっている豊岡杞柳細工の職人とともに柳のバッグ「Kiryu-zaiku Basket」を発表するなど、先細る伝統産業の担い手たちとタッグを組み、デザインで付加価値を高める。
慶應義塾大学卒業後、コネヒト、PRISM
Projectの2社のM&Aを経て22年にAnotherBallを創業。
主とするVTuberプロジェクト「IZUMO」は八百万の神々が集う出雲大社に由来し、世界中のクリエイターたちが面白いコンテンツを生み出せる場をつくりたいという願いが込められている。現在はシンボルキャラクターであるAilis(アイリス)を、営利・非営利を問わず無料で利用できる破格のサービスを実践中。
世界中でファンクリエイション文化が拡大することを予想し、起業と同時にシンガポールへ移住。国内外の著名投資家によるエンジェルラウンドで3億円の資金調達を実施。今後の展開に期待が高まる。
東京造形大学を卒業後、本格的に藍染技術を学ぶため、阿波藍の産地として知られる徳島の地域おこし協力隊に応募。
2012年に徳島県・上板町に移り住み、町営の藍染体験施設を通して蒅づくり、天然藍の染色を学ぶ。同年、同僚とともに藍染ユニットBUAISOUを立ち上げる。
15年、同町に藍染製品を製造・販売する「BUAISOU」と、染料となる蒅を生産する「BUAISOU.製藍所」の2社を、NYに体験などを主体とした「BUAISOU
Brooklyn(現在は解体)」の計3社を設立し、染料作りから製品の制作、販売までを一手に担う。
天然素材にこだわり、自ら畑で葉を育て収穫する伝統的な製造過程を重んじながらも、現代的な技法を駆使した新しいものづくりをすることで、世界中から商品やワークショップのラブコールを受ける。TORY
BURCHやJIMMY CHOOなどハイブランドとのコラボも多数。
片野は、高校卒業後よりMITメディアラボやSony CSLなどを経て独立し、現在はサステナビリティ領域の事業・研究コンサルなども行う研究者。西尾は富山県小矢部市にある造園業「越路ガーデン」の3代目で、全国各地で造園空間の設計と施工を行う。2人は2021年末に造園ユニットVeigを結成し、これまでに異分野との共同プロジェクトや日本科学未来館の常設展示のほか、南青山にある富士フイルムグループの拠点「FUJIFILM Creative Village」の植栽も担当した。景観的に美しくありながら生態系としての機能や役割も重視した独自の空間を目指す。
震災直後の青森ねぶた祭で「祭りは人間の元気の源」であると気がつき、武蔵野美術大学在学中に地元の祭りを支援するサークルを立ち上げる。卒業後も食品メーカーに勤務する傍らで活動を拡大し、2015年にオマツリジャパンとして法人化。「祭りで日本を盛り上げる」をミッションに掲げ、全国に約30万件あるとされる祭りの情報を発信するウェブサイト運営のほか、企業と祭り主催者の懸け橋となる取り組みや、祭りを活用した地域ブランディングなどで、人手・資金・PRの課題を抱える各地の祭りを多面的に支援し、全国の地域活性化を目指している。
京都生まれ京都育ち。大学卒業後は半導体企画販促として電子部品メーカーのロームに入社。その後、西洋陶器の絵付け技術等を指導するサロン運営の傍ら、さまざまな京職人の事業をサポートしていたことから、既存の着物をワンピースやドレスなどの洋服へとリメイクする「着物ドレス」の着想を得て、20年に季縁を創業。日常生活における着物着用の需要が減るなか、タンスや中古市場に眠る高品質な着物をもう一度現代に蘇らせるべく、アップサイクルした着物ドレスを展開するブランド「季縁-KIEN-」のほか、個人から持ち込まれる着物のリメイクに対応する専門サービス「キモノヌッテ-kimononutte-」も運営している。このほか、VIP向けの観光コーディネイトや、神社仏閣でのイベントプロデュースなど、業界を超えて京都の伝統工芸・技術の魅力を世界へ発信中だ。
学生時代に陶芸に出会い、その後、陶芸家の財満進に師事。「梅華皮」や「石爆」と呼ばれる伝統的な技法を駆使しながらも、鮮やかな色遣いやポップな造形をもつ作品の数々が海外でも高く評価され、2018年、ファッションブランドLOEWEが主催するアワード「LOEWE Craft Prize 2018」特別賞を受賞。21年には陶芸界で優れた業績を残してきた陶芸家に贈られる日本陶磁協会賞も受賞した。現在は岐阜県多治見市に構えた工房を拠点に創作活動を行っており、作品は世界各地のパブリックコレクションに収蔵されている。
江戸寛政年間(1789〜1801年)に創業した京提灯の老舗「小嶋商店」を営む。竹割から紙貼り・絵付けまでの全工程を手作業で行う製法を代々受け継ぎ、京都・南座に吊られている提灯をはじめとする伝統的な京提灯をつくり続ける一方で、提灯の素材やフォルムと「空間」の関係性を模索し、灯りをともすことで生まれる新たな景色を創造している。2019年にはパリ装飾芸術美術館、22年にはプラハの国立美術館からそれぞれ声がかかり、現地で京提灯製作の実演とワークショップを実施した。21年には提灯の用途・形に着想を得たアパレルブランド「JINAN」をローンチ。このほか、オーストラリア人デザイナーとのコラボ作品がミラノサローネ国際家具見本市の空間デザインコンペティションに出品されるなど、国内外で活動の幅を広げている。
スイス生まれの小山は、美大でデジタルデザインを学び、国内外の企業でウェブ制作やアプリ開発に携わったのち、米Twitter(現:X)社でデザイナーとして勤務。2020年に京都へ移住し、元共同代表の塚本はなとPieces of Japanを設立する。日本各地の伝統工芸品に着目し、次世代の職人に貢献することを目指してライフスタイルブランド「POJ Studio」を立ち上げた。伝統技法を生かしてつくるインテリアアイテムは、のべ160以上の国へ輸出されている。22年には、金継ぎの技術や自社商品を体験できる場として京都に初の実店舗をオープンした。
2018年にレディース向けシューズブランド「Relier81(ルリエ エイトワン)」を京都で創業。シューズには不向きとされてきた着物地や帯の生地の強度を高めるなどして独自のサンダルを開発し、日本製アパレル「UNITED TOKYO」や西陣織メーカー「田村屋」などとコラボレーション販売を行ってきた。設立5周年を迎えた23年、リブランディングを実施し、着物の上に羽織る道みち行ゆきを活用したユニセックスの開襟シャツや、踏み台に着想を得たバッグなど商品展開を広げた。受注拡大を見据えて生産体制を整え、全国のデパートでポップアップストアを展開。伝統的な和柄だけでなく現代の暮らしに合わせてモダンな柄も選定し、海外展開の機運を狙う。「海を渡るという創業当初からの目標を実現させ、京都から世界を目指す起業家や職人と結束し、新しい伝統の形を発信していきたい」。
樹液を仕入れ、精製から調合、調色を一貫して自社で行う、明治42年創業の漆屋「堤淺吉漆店」の4代目。北海道大学を卒業後、養鶏会社勤務を経て2004年に堤淺吉漆店へ入社。漆の国内消費や職人の減少を懸念し、16年より漆の魅力を伝えるプロジェクト「うるしのいっぽ」を開始。1万年前から日本の風土で使われてきた漆を、現代にも求められるサステナブルな天然素材と捉え、文化財修復や伝統工芸品の製作といった既存のニーズのほか、サーフボードやBMXの製造にも漆を用いることで、伝統の枠にとらわれない漆の可能性を拡げている。また、19年には一般社団法人パースペクティブを設立し、京都市で漆の木を育てるプロジェクト「工藝の森」を運営、漆塗り木製サーフボード「漆板 siita」の制作も開始した。植栽活動など「植えるから始まるモノづくり」が評価され、工芸支援団体Japan Craft 21コンペティション最優秀賞を受賞した。
ゴールドマン・サックス証券でキャリアをスタートさせ、外資ヘッジファンドへ移った後の2017年、編集者・三枝亮介とともに、作家のエージェント業とプロデュース業を行うCTBを共同設立。
作家の著作権をエージェントが包括的にマネジメントする諸外国に対し、権利関係が複雑な日本の産業構造に機会を見い出して起業に至った。
当時未翻訳だった伊坂幸太郎の小説『マリアビートル』をハリウッドに売り込み、22年にブラッド・ピット主演の映画『Bullet
Train』として映像化を実現、寺田はエグゼクティブ・プロデューサーに就任。
同作は世界興行成績2.3億ドルのヒットを記録し、伊坂作品は現在20カ国語で出版されて多くの海外読者を獲得している。
国内に埋もれる優れた作家を世界文学の舞台へ届けていく。
「ふるさとの日常を次世代のラグジュアリーへ」をテーマにした日本発ラグジュアリーブランド「MIZEN」を2022年4月に設立。
寺西は京都大学建築学科を卒業後、ヨウジヤマモトに入社。渡欧し、キャロル
クリスチャン ポエル、アニオナを経て、フランスのエルメスで、3Dデザイナーを務めた。
18年12月に帰国し、伝統産業の新たな価値を発信するため STUDIO ALATA
を設立。日本各地の紬を活用したコレクション「MIZEN BLUE
勝(SHO)」では、12産地の職人にオリジナルの反物の制作を依頼し、大島紬や有松鳴海絞りなどが、ショート丈のブルゾンやフレアスカートなどに生まれ変わった。大量生産とは対極にある職人の手仕事に寄り添う服づくりで、職人と消費者をつなぐ。
金沢で350年以上の歴史を誇る茶陶の名窯
大樋焼(おおひやき)の家系に生まれ、現当主の十一代大樋長左衛門を父に持つ。
3DCADやプログラミング、AIを活用しながら、伝統的な陶芸技法と最先端の建築テクノロジーの融合を目指し、新しい工芸の価値を世界に発信する。代表作「Bone
Flower」は、白い骨が花を咲かせたようなかたちで儚さとダイナミックさが共存。
「空間を構成する工芸」と評され、金沢21世紀美術館に立体作家としては史上最年少で永久所蔵されている。
2021年に建築デザインラボEARTHENを立ち上げ、23年春には、処女作「Node」を金沢で発表。
温もりのある土壁と現代的なガラスでハイブリッド構成された建築には、人々が出会う場になるようにとふたつの道が交差する。陶芸家と建築家、芸術界の二刀流として注目度が高まる。
兵庫県川西市にある老舗の植物問屋に生まれる。高校卒業後、約2年間バックパッカーとして世界中を放浪。ボルネオ・キナバル山での食虫植物との出合いを機に植物への関心を高めて以来、植物採集を天職とする。2012年より「ひとの心に植物を植える」をスローガンに掲げてそら植物園としての活動を開始し、15年に法人化。「プラントハンター」として年間200トンを超える植物の国際取引を行っている。ランドスケープや空間緑化を通じて、国内外の公共・商業施設をはじめ、各国の王侯貴族や政府機関、神社仏閣などの文化施設からの寄せられるさまざまな依頼に応え、プロジェクトを成功させた。日本とシンガポールの国交50周年時には、シンガポール政府が手がける植物園で桜の花見イベントを開くなど、植物にまつわる知識と経験を活かし国際文化交流にも貢献している。
蜂谷潤と友廣裕一が2016年に共同創業。
「おいしいのに食べられてこなかった海藻」や「食べられてきたけど採れなくなった海藻」の研究・生産方法の確立から、食べる方法の開発・提案までを一貫して手がける。
研究・生産分野を担う蜂谷は、収穫量が激減し食文化ごと消滅の危機にあったスジアオノリに注目。
世界初となる地下海水を利用した陸上栽培モデルを確立し、高品質で安定供給を実現した。
現在は、海中の海藻が消失してしまう「磯焼け」の問題に立ち向かうべく、海面栽培にも注力する。
母藻を採取して種を培養する技術を活かし、これまで栽培できなかった約50種類の種苗生産にも成功。
それと同時に、友廣リードで、海藻の食べ方の多様なニーズを生み出すべく、料理や加工品の開発にも着手。
海藻の新たな食文化を開拓し発信している。
2007年にアパレルのECサイト制作を担うアラタナを創業。15年に同社をスタートトゥデイ(現:ZOZO)へ売却してグループに参画し、グループ会社取締役を経て、20年に不動産×テクノロジー企業であるNOT A HOTELを設立。ユーザーが購入した物件を「自宅」「別荘」「ホテル」としてアプリ上で自由に用途を切り替え、相互に利用したり貸し出したりすることができるプラットフォームサービスを提供している。高額不動産をオンライン販売する大胆な手法が注目され、物件の販売開始初日から15億円、初年度に70億円の販売実績を残した。
学生時代を福岡と上海で過ごす。帰国後、金沢にあった専修学校 KIDI PARSONS(※現在は廃校)でデザインを学び、2020年6月に自身のアートコレクションをベースにした現代アート美術館「KAMU kanazawa」を金沢にオープンする。日本の美術館は赤字経営が多数であることに疑問を抱き、自分で黒字化できる経営プランを算出。クラウドファンディングの立ち上げからわずか6カ月後の2020年6月に開館を実現させた。市内の複数箇所に分散させての作品展示や、招待券・宣伝ポスターの印刷廃止など、美術館の常識を覆す取り組みで注目を集める。美術館・アーティスト・街の三方良しになるビジネスをモットーとし、観光都市・金沢に新たな人流を生みだした。今後の10年間では、良い作品を後世まで残していくミッションを叶える運営システムの完成を目指す。
総合商社の営業職、コンサルティングファームを経て、2017年にアートのサブスクリプションサービス、Casie を創業した。藤本の父は画家で、幼少期に作品発表の機会を満足に得られることができずに苦労した姿を見ていて、アーティストを支援する事業を志すようになった。才能ある画家が経済的理由で創作活動を断念する現在のアート業界に課題を感じ、新しいアートのエコシステムを考案したのがCasie。いまでは1万3,000点以上の作品のなかからお気に入りを選んでレンタルできる。好みの絵がわかる「アート診断」や、アーティストの紹介やアートにまつわる情報を紹介する冊子「FUMUFUMU」が人気で、アーティストの支援だけでなく顧客のアート教育にも力を入れている。
幼少期より培った調香やハーブ・スパイスへの知識を生かし商品開発と草木採取を行っていた創業者の古谷と、クリエイティブデザイナーである木本を共同創業者に、2021年に全国の里山に眠る可食植物の活用を目指す「日本草木研究所」を設立。
全国の山主に協力を仰ぐことで、創業から「原材料は国産素材100%」のこだわりを貫き、これまでに国産植物でつくるシロップや塩、酒、和菓子などを開発してきた。廃棄される間伐材を用いた商品など、サステナブル、フェアトレード、ガストロノミーの観点で満足のゆく商品が評判を呼び、創業から2年足らずで売り上げは4倍近く成長。
国外への輸出も開始し、ひっそりと日本の山々に根付く植物たちを世界中の食卓へ運んでいる。
「あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を」を理念に掲げ、ゲストハウスやホステルを運営するBackpackers’ Japanで起業後、福島弦と意気投合し、19年に共同でSANUを創業。「Live with Nature.」をミッションに、月額55,000円で郊外にある複数の施設に滞在できるサービス「SANU 2nd Home」を展開する。設営する木造キャビンにおける国産材の使用や建築面での工夫などが環境再生型事業のモデルとして高く評価され、「ウッドデザイン賞2022」最優秀賞を受賞。24年末までに全国30拠点200室を構える事業拡大を予定している。
2019年にロサンゼルスで海藻フードテック事業を営むCashi Cake inc.を起業。ビーガン、グルテンフリーのほか、アレルギー対応や無着色、無添加にもこだわり、あらゆる食文化への配慮した和菓子「琥珀糖」で、世界中の人に愛され、未来に貢献するブランドであることを目指した和菓子ブランド「MISAKY.TOKYO」を展開する。職歴上、食分野はまったくの未経験であったが、アメリカ市場を徹底的に勉強して挑んだマーケティングが的中し、創業からわずか1年で急成長。トップセレブのプロモーションに起用されて一躍その名を知らしめた。23年からは、海藻を使った機能性飲料「OoMee(ウーミー)」の開発にも着手。日本が誇るホスピタリティと技術を込めて世界の「食」を開拓している。
「銭湯活動家」を自称し、これまでに全国700軒もの銭湯に入浴。かつてのアルバイト先である「サウナの梅湯」(京都府)が営業終了を検討していると聞きつけ、2015年に客から経営側へ転身。古びていた設備の改装や、Tシャツ・ステッカーなどオリジナルグッズの販売、浴場を会場にした音楽イベントの開催など、銭湯を舞台に多様なアイデアを実現することで人気店へと復活させた。2019年に継業の専門集団「ゆとなみ社」を創設。現在は独自のノウハウを用いて京都府内外で直営8軒、コンサルタントを含め計9軒の銭湯の経営を支えている。古くから地元に根付く憩いの場として、時には地域住民と福祉をつなぐ役割を果たすなど銭湯外のコミュニティにも貢献し、銭湯という文化の継承に全力を注ぐ。
留学先のロンドンでファッションメディアやキュレーションを学んだのち、日本全国のテキスタイルが並ぶコミュニティスペース「セコリ荘」を立ち上げる。メディア、マテリアル、エキシビション、エデュケーションの4つの柱での貢献を目指し、2017年に糸編として法人化。チームで年間200軒以上の産地企業訪問を重ねながら、海外とのBtoBマッチングや、繊維産業界の人材育成の場「産地の学校」の運営、オリジナルプラットフォーム「TEXTILE JAPAN」での情報発信など、多岐にわたる活動で日本の繊維・アパレル産業に貢献している。
江戸時代初期から続く絞り染めの染色技法「有松鳴海絞り」を家業とする「鈴三商店」に生まれる。ドイツの美大に留学中だった2008年に起業してオリジナルブランド「suzusan」の生産・販売を開始。学生寮でデザインした商品を手に、約5年間、欧州中のショップへ飛び込み営業を続けた。これまでに29カ国での商品展開に成功。現在も売り上げの9割を外貨が占めている。2021年からは名古屋市が主催する伝統産業海外マーケティング支援プロジェクト「Creation as DIALOGUE」の統括コーディネイターに就任。さらに22年からはsuzusanの取り組みが国内企業の海外進出例として全国の中学校の国語の教科書に採用されるなど、各方面でその活動が高く評価されている。
中央大学在学中にHARTiを創業。現代アーティストのプロダクション事業を展開し、創業から半年足らずで東洋経済「すごいベンチャー100」に選出されるなど、早くから注目を集める。21年からは国内初のアプリ型NFTプラットフォーム「HARTi®︎」を開発・運営。仮想通貨を持たずにNFTを購入できる機能など「技術」と「芸術」を掛け合わせた独自のサービスで人々に新しい体験を提供している。「感性が巡る、経済を創る」を企業理念に掲げ、新しい文化・芸術市場のエコシステムを想像することで、ウェルビーイングな社会を実現を目指す。
1995年生まれ、千葉県出身。クラシックで培った技術とアレンジ、即興技術を融合した独自のスタイルで話題を集めるピアニスト。2018年、東京大学大学院情報理工学系研究科在学中にピティナピアノコンペティション特級グランプリを受賞し、本格的に音楽の道へ進んだ。2021年、第18回ショパン国際ピアノコンクールでセミファイナリスト。”Cateen(かてぃん)”名義で活動するYouTubeチャンネルは登録者数125万人を超える。
Advisory Board
アドバイザリーボード
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東京大学法学部卒。イリノイ工科大学デザイン学科修士課程修了。P&Gにてファブリーズ、レノアなどのマーケティング、ジレットのブランドマネージャーを務めた。ヒューマンバリュ一社、ソニーを経て独立。企業や自治体のビジョンデザインを得意とする。多摩美術大学特任准教授。
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慶應義塾大学卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所でコンサルティング業務に従事後、2008年 米ピッツバーグ大学経営大学院にてPh.D.(博士号) 取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013 年より早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール准教授。19年より現職。専門は経営学。著書に『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社)など。
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講談社ファッション雑誌『ViVi』『GLAMOROUS』などでファッションエディターとして活躍。その後コンデナスト・ジャパンにて『GQ JAPAN』 編集長代理、『VOGUE GIRL』 クリエイティブディレクターを経て、gumi-gumiを設立。『Numero TOKYO』 のエディトリアルアドバイザー、Netflixドラマ「Followers」のファッションスーパーバイザー、企業のコンサルティング、情報番組のコメンテーター等幅広く活躍。
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1964年熊本県生まれ。「料理の鉄人」「カノッサの屈辱」など斬新なテレビ番組を数多く企画。脚本を担当した映画『おくりびと』で第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞を獲得。執筆活動の他、地域・企業のプロジェクトアドバイザー、2025年大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサーなどを務める。「くまモン」の生みの親。京都芸術大学副学長。京都の料亭「下鴨茶寮」主人。
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森ビル新領域事業部 TOKYO NODE運営室室長。2018年「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless」室長を経て、現在は23年10月に虎ノ門ヒルズにオープンする文化発信施設「TOKYO NODE」の開業準備を手がける。25年大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「いのちのあかし」計画統括ディレクター。祖父は日本画家・杉山寧と建築家・谷口吉郎、伯父は三島由紀夫。
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1962年、東京都生まれ。「Soup Stock Tokyo」のほか、ネクタイブランド「giraffe」ニューサイクルコモンズ「PASS THE BATON」などを展開。「生活価値の拡充」を企業理念に掲げ、既成概念や業界の枠にとらわれず、現代の新しい生活の在り方を提案している。小さくてユニークなミュージアム「The Chain Museum」、アーティストと出会えるプラットフォーム「Art Sticker」なども運営する。
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1974年、大阪生まれ。14歳で単身渡英。ドイツで就職し2000年に帰国して以降、大手メディア、アートギャラリー勤務を経て、08年に駐日アメリカ合衆国大使館文化担当官首席補佐に着任。歴代駐日アメリカ大使の文化アドバイザーを務め、大使館における文化戦路の立案運営を担当。18年から現職。世界的庭園財団の国内・国際プロジェクトを統括しながら、次世代に向けた日本文化・芸術のグローバルな発信・展開を牽引している。
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東京大学大学院修了。Re entertainment代表取締役。リクルート、DeNA、デロイト トーマツ コンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオ、ブシロードで、メディアミックスIPプロジェクトの推進やアニメ・ゲーム・スポーツの海外展開を担当。事業家と研究者、作家、政策アドバイザー(経産省コンテンツIPプロジェクト主査)を兼任しながら、コンテンツの海外展開をライフワークとする。
Comment
2010年「世界を変えるデザイン展」13年にはマレーシア科学技術省と共に“Asia Grassroot Innovation Forum”などを主催。以降、「Design for Freedom」「border sessions Japan」などのカルチャーフェス(主催)を通じ、国内外の文化資本の発展に寄与。21年より都市編集を行うMEDIA SURF、カルチャーマガジンを展開するGOOD ERROR MAGAZINEなど、文化を基軸としたプロジェクトに多数参画している。
Judging Criteria
選出基準
選出にあたり、次のどちらかに当てはまることを条件とする。
①文化資産や地域資源を掘り起こし、新しい価値やエコシステムをつくろうとしている人たち
②日本文化の価値を世界に伝えていくことができる新たなリーダーシップをもつ人たち
評価軸としては、以下をポイントとした。
- グローバルな活躍が
期待できる - 地域産業や
コミュニティへの貢献 - 事業や取り組みが、
社会問題の解決にも
つながっている - 持続可能性への
配慮がある
Award Ceremony
アワード概要
- タイトル
- CULTURE-PRENEURS
AWARD 2023 - 共催
- 開催日
- 10月24日(火)
- 開催場所
- 京都市勧業館 みやこめっせ
(〒606-8343 京都市左京区岡崎成勝寺町9番地の1) - プログラム
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17:00- 受付 17:30- 開会
授賞式、トークセッション
懇親会(飲食あり)19:30 閉会 ※時間・内容は変更になる可能性があります
Special Contents
スペシャルコンテンツ
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伝統と産業をつなぐ 茶人起業家・岩本涼が目指す場所
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金沢の人、食、暮らしから生まれる「現代の上手物」seccaが追い求めるものづくり
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食文化ごと消えつつある「海藻」を独自技術で栽培 シーベジタブルの挑戦
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文化で稼ぐ、新ビジネスの担い手「カルチャプレナー」たち30組を発表!
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Finding the New Value in Japan
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クラウンと選んだ、伝統と革新で魅了する新時代のピアニスト
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アートサブスクで画家と観客を育成する 「Casie」藤本翔の覚悟
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元エルメスデザイナーが紡ぐ「真の贅沢」 日本の職人こそが、ブランドそのもの
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異世界的なキャラクターで、東京カルチャーを体現。 ピンクツインズが生み出す、戦略的「違和感」の正体
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デジタル技術で地域に根ざした本来の建築を 秋吉浩気の挑戦
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アーティストが世界とつながる幸せな場所「KAGANHOTEL」――京都で文化の種を育むカルチャープレナーの挑戦
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Forbes JAPAN 2023年11月号
(2023/09/25発売)