そんな思いで、昨年、家業で培った「残土の受け入れ」と「農業」のノウハウを生かし、農地として復活させる新規事業へと踏み出した。

「新規参入の企業が『木が生い茂って荒れたこの土地を農地にします』と言っても、『(残土処理の)お金だけもらって、逃げるんちゃうんか』と疑われ、突っぱねられて終わりです。地元で何年も農業をしてきたからこそ『マルキさんが無責任に逃げるわけないか』『マルキさんだったら農地として仕上げるだろうで』と理解も得やすい。ある意味、逃げられないのはアトツギの宿命でもありますけどね(笑)」
土地購入と並行して、何をつくるかの試行錯誤も重ねている。当初は稲作をして米粉を生産・販売する計画だったが、「米粉の壁にぶち当たった」と堀。米粉は小麦アレルギーの人が代替食品として選ぶことも多く、高い品質を担保するには製粉施設に億単位の投資が必要だとわかったためだ。
「米粉も完全に諦めたわけではないのですが、周りから『うちのビールにする麦をつくってほしい』『この辺りは丹波の黒豆が有名だから枝豆がいいんじゃないか』などと、加工の手間なく納品できる作物のアドバイスを聞くたびに、どれが良いのか迷っています。造成する形状により、稲作でも枝豆でも何でもつくれるのがうちの強み」
ゆくゆくは契約栽培による生産や、京丹後市産にこだわった料理を提供する飲食店や宿泊施設とのコラボを目指し、仲間づくりにも力を入れていく。「土地に合った農作物なら何でもつくれるし、牛の放牧だってできる。この輪が全国に広がって、いつか『荒廃農地ニンジン』『荒廃農地ジャガイモ』が入った土建屋レトルトカレーなんてつくれたら面白いですよね」。構想は膨らむばかりだ。
