経営・戦略

2024.07.08 15:30

2000人超えの部署が一枚岩に。サイバーエージェント組織文化の浸透術「ほんさぽ」の威力

紺屋英洸(写真左)小暮健太(同中央)松井千佳(同右)|サイバーエージェント

同社の屋台骨であるインターネット広告事業部は、国内外6拠点にある子会社を含め約2300人。根底にある「広告効果の最大化」の浸透を促す施策の数々とは。


サイバーエージェントが好調だ。2024年9月期第2四半期(2024年1月〜3月)は四半期の過去最高売上を更新。売り上げの約半分を占めるインターネット広告事業も過去最高の売り上げとなり、躍進を支える屋台骨となっている。

国内でインターネット広告市場がマスコミ4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)の広告市場を追い抜いたのは21年だ。市場の拡大がインターネット広告事業の成長に貢献したことは間違いない。ただ一方で、市場の拡大によって浮上した課題もあった。拡大スピードに営業組織が追いつかなくなったのだ。

インターネット広告の営業フローは次の通りだ。媒体の広告枠を売り、広告効果を最大化するコンサルティングを行い、実際にクリエイティブを制作して、それをメディアに入稿し、広告効果をレポーティング。インターネット広告事業本部営業局長の小暮健太は、こうしたフローについてこう解説する。「インターネット広告黎明期は、これらの業務をセールスがやっていました。しかし、媒体が増えたうえにテクノロジーが発展。当社は新卒採用中心だったこともあり、業務の増加や高度化に育成が追いつかなくなり、担当者によるボラティリティが高くなってしまった」
 
この課題に対応するため、インターネット広告事業部ではいち早く分業化を推進した。入稿やレポーティングといったオペレーションは、子会社シーエー・アドバンスを設立して分離。コンサルティングや運用も広告事業本部内に専門の部署を設けている。これにより、セールスはアカウントリーダーとして顧客接点に集中できるようになった。
 
ただ、高度化する業界で分業化が起きるのは当然の流れでもある。むしろサイバーエージェントが秀逸だったのは、分業化で起きがちなサイロ化を防ぎ、組織として有機的に動いている点だろう。例えば広告効果はデイリーで測定され、結果はセールスや運用チームにフィードバックされて改善が加えられる。機動的に動けるのは、まさに組織やチーム間の連携がうまくいっているからだ。
 
インターネット広告事業本部は約1300人の組織だ。オペレーションを担うシーエー・アドバンスは約1000人。合わせて2300人規模の組織がなぜ一枚岩で動けるのか。同事業本部オペレーションテクノロジー本部プロダクト設計室の紺屋英洸は、「価値観が共有されていることが大きい」と明かす。

「私たちが最も大切にしているのは、『広告効果の最大化』。仮に売りやすい商品があっても、お客様にリターンが少ないものならば売りません。これは本当に徹底していて、事業責任者である副社長の岡本(保朗)が変わらず言い続けていることです」
 
この考え方を組織に浸透させる施策も多い。これまでに広告効果を2倍にする提案を練る「2倍プランニング」や、アカウントごとにプランを競わせる「アカウント戦略合宿」を実施し、常に広告効果の最大化を狙う意識を植えつけている。
 
興味深いのは、セールス以外のメンバーも広告効果最大化の意識をもっていることである。「毎月末には『締め会』が行われて、キャンペーンの進捗や営業の数字が共有されます。締め会には、コンサルタントなども参加。シーエー・アドバンスは沖縄やベトナムなど6拠点ありますが、海外のスタッフもオンラインで参加して価値観をすり合わせています」(紺屋)
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文=村上 敬 写真=吉澤健太

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