経営・戦略

2024.07.08 15:30

2000人超えの部署が一枚岩に。サイバーエージェント組織文化の浸透術「ほんさぽ」の威力

分業によるサイロ化を防ぐ仕組みはほかにもある。デジタルでナレッジを共有する「ほんさぽ」だ。

インターネット広告事業本部では、生産性向上プロジェクトとして「あんしんサポートセンター」を組織化した。前述したように同社は新卒採用中心の組織。ボトムアップで成長を促すため、社員にナレッジやツールをセンターから提供する。

このうちナレッジ領域をカバーするが、本部サポートからの連想で名づけた「ほんさぽ」である。導入や運用を担当したメンバーのひとり、人事局の松井千佳はこう明かす。「以前は組織に散らばるナレッジを社内Wikiで集約していましたが、UIが悪くて探しづらく、1日に数人しか見にきませんでした。『ほんさぽ』はUIを改善して更新を毎日実施。チャットボットやナレッジで解決しない場合は各担当者がいる質問部屋へ誘導するなど、その場で100%解決する仕組みをつくることで、現在は1日300人以上のアクセスがあり、週に2000〜3000回閲覧をされるツールへと成長しています」。

実は松井は「ほんさぽ」の功績でMVC(Most Valuable Contributor)として表彰された。セールスを支える裏方にスポットライトを当てて称賛するのも、セールスを組織戦ととらえているサイバーエージェントらしい。

広告事業本部の試算によると、生産性向上プロジェクトで資料検索時間が半分に削減。最大で8分の1に削減できたという例もある。もちろんここで進化を止めるつもりはない。「セールスは多忙。AIでメールやSlackを自動返信するツールを開発中」(紺屋)というように、デジタルを活用してさらに生産性を追求する考えだ。その先には何があるのか。小暮が最後に思いを語ってくれた。「生産性が高まれば、お客様のためにもっと頭と時間を使えるようになります。広告業界は進化が早い。進化についていくだけでなく、自分たちがマーケットを進化させるくらいの気持ちでやっていきます」。


こぐれ・けんた◎インターネット広告事業本部 営業局局長。(写真中央)

こんや・えいこう◎インターネット広告事業本部 オペレーションテクノロジー本部 プロダクト設計室 局長。(写真左)

まつい・ちか◎インターネット広告事業本部 クリエイター人事局。(写真右)

文=村上 敬 写真=吉澤健太

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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