事業継承

2024.07.24 13:30

荒廃農地を公共残土でよみがえらせる「土建イノベーション」

アトツギ支援の地域エコシステム

そんな堀の挑戦を後押ししたのは、地元・京丹後を拠点とする金融機関や先輩経営者たちによるアトツギ支援のネットワークの力が大きい。京都信用保証協会は2020年から後継者を対象にしたセミナーを継続的に主催しており、自治体や金融機関、事業承継を経験した地元後継者らと連携しながら、アトツギ支援に尽力している。23年からは家業を生かした新事業開発を目指す後継者支援プログラム「京都府北部アトツギベンチャー道場」を開催。全国的に有名な中小企業経営者らの講義に加えて、ミシュラン二つ星を獲得したすし店にも愛されるお酢を製造する飯尾醸造の飯尾彰浩など、地元のアトツギ経営者との1on1メンタリングも随時行うプログラムだ。堀が「アトツギ甲子園」の出場を決意したのも、道場への参加がきっかけだった。
 
7年前に家業に入って以降、現場監督として土木工事に携わってきた堀は、新規事業に挑戦する必要性をかねてから感じていたという。

「事業のメインである公共工事は入札契約制度。つまり、会社の命運はくじ運で決まり、価格も買い手側に決められてしまう。自分たちで価格や品質を決められる商売をして、会社としてのリスクヘッジをしなければと危機感を抱いていました」
 
かねてから考えていたアイデアをまとめてアトツギ甲子園へ応募。地元のベンチャー企業「ローカルフラッグ」(京都府与謝野町)代表の濱田祐太らの協力も得ながら、ブラッシュアップし受賞を勝ち取った。しかし、事業の本番はこれからだ。

「建設業界は決められた図面・決められた規格どおりにつくることが仕事だからこそ、思考が固くなりがちです。イノベーションのない建設業界に一石を投じることが僕の役目。このビジネスの結果が出るまでには長い時間がかかりますが、アトツギの決意と覚悟で向き合っていきたい」
堀(右から2人目)も参加した後継者支援プログラム「京都北部アトツギベンチャー道場」の主催者ら。堀の左はローカルフラッグの濱田。

堀(右から2人目)も参加した後継者支援プログラム「京都北部アトツギベンチャー道場」の主催者ら。堀の左はローカルフラッグの濱田。


マルキ建設◎1957年、京都府京丹後市で堀製瓦工業として創業。1985年にマルキ建設を設立。総合建設業者として京都北部エリアの公共工事に携わるほか、運送業務、農林業も展開。現在の代表取締役は2代目の堀紀博。従業員数は37人。

堀 貴紀◎マルキ建設取締役。1990年、京都府生まれ。金沢工業大学卒業後、建設会社勤務を経て2017年にマルキ建設に入社。19年4月から現職。家業の経営資源を生かし、地域課題の解決を目指す新規事業に取り組む。

文=堤 美佳子 写真=吉澤健太

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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