だが、米国の新たな軍需品による補給がぎりぎり間に合ったウクライナ軍は、北東部に増援部隊を送って防御をてこ入れしつつ、東部でも防御をそれほど手薄にせずにロシア軍の攻勢を食い止めることに成功した。一方、装甲車両の不足がますます深刻化し、基礎訓練システムが徐々に崩壊しているロシア軍は、ろくに訓練を受けていない歩兵が徒歩でウクライナ軍の陣地を攻撃せざるを得なくなっている。
その結果、おびただしい数の死傷者を出している。英国防省は「ロシア軍の(人員の)損害は2024年も引き続き高い水準で推移しており、5月の人的損耗(編集注:同省によるとここでは死者と負傷者のみ)は1日平均1200人を超え、報告数としては戦争が始まってから最も多かった」と報告している。
さらに「損耗率が上昇しているのは、ロシア軍が広範な前線で続けている消耗戦の反映とみてほぼ間違いないだろう。ロシア兵の大半は限られた訓練しか受けていないのがほぼ確実であり、複雑な攻撃作戦を遂行できない」と続けている。
ロシア軍の狙いは、ウクライナ軍の戦力を引き伸ばし、薄く広げさせた隙に、チャシウヤールに進撃することだったのだろう。だが、実際には自分たちのほうが戦力を引き伸ばし、薄く広げるはめになった。
ロシア軍は最終的には、訓練された人員を十分に集中させて運河地区やその側面に対する攻撃を成功させ、チャシウヤール中心部に対する攻撃に乗り出すかもしれない。
だが、もしそうできても、ロシア軍がチャシウヤール全体を占領するには数カ月かかり、人員の損害はさらに数千人増えるだろう。その代償は果たして、戦争拡大前にウクライナで人口規模が266位だった小都市という戦果に見合うものだろうか。
(forbes.com 原文)