ロシアのナショナリストたちにとってきわめて象徴的な日であることから、軍事アナリストたちは何カ月も前から、ロシア軍は全面侵攻して2年3カ月目に入るウクライナの1000kmにおよぶ戦線の全般的な状況とは無関係に、この日に新たな攻勢をかけるだろうと予想していた。
目的は、戦勝記念日にロシアの指導者ウラジーミル・プーチンに「贈り物」(エストニアの軍人で軍事アナリストのアルトゥール・レヒ)をするためだろうともみられていた。
果たしてロシア軍は9日、ウクライナ北東部の新たな軸で攻撃を始めた。ハルキウ州の州都でウクライナ第2の都市、ハルキウの北27kmほどに位置するピリナ村に偵察部隊を侵入させた。ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は「ロシア軍はきょう、ハルキウ地域でウクライナに対する作戦を拡大した」とビデオメッセージで述べている。
象徴的な日を決行日に作戦計画を立てることの問題は、同じカレンダーを誰もが見ているということだ。ウクライナ側は、ロシア側が5月9日に攻め込んでくることを知っていた。地上攻撃の数日前にロシア空軍はハルキウの北方面への爆撃を強化していたが、それもまたロシア軍の次の行動を予告するようなものだった。
「われわれは占領者(ロシア)の軍隊の規模も意図も把握している」とゼレンスキーは語っている。
ピリナ周辺ではウクライナ領土防衛部隊の第125独立領土防衛旅団が防御線を保っているが、陸軍の第42独立機械化旅団の部隊が増援したようだ。それには同旅団のドローン部隊「ペルン」が含まれる。
ロシア軍の第11軍団か第44軍団、あるいは第38独立親衛自動車化狙撃旅団の所属とみられる部隊が白昼、ピリナに車両で進撃してきたとき、ウクライナ側は待ち構えていた。
第42旅団によると、ペルン部隊のFPV(一人称視点)ドローンがロシア軍のBMP歩兵戦闘車4両を「その人員もろとも」破壊した。ゼレンスキーは「わが軍の戦士、大砲、ドローンが占領者に対して反撃している」と説明している。
一方、ロシアのプロパガンディストであるアレクサンドル・コッツは、ロシア軍がピリナの南数kmまで前進したと主張したが、それを裏づけるような証拠はない。ロシア側は戦勝記念日に何を達成しようとしていたにせよ、多くの兵力は費やさず、戦果はせいぜい小さな村の通り数本だった。