欧州

2024.06.04 12:30

「マッドマックス」なロシア軍、装甲オートバイで戦場を爆走 そして100年前の教訓学ぶ

2023年5月、ロシア・サンクトペテルブルクで行われた軍事パレードで、古いオートバイに乗って走るロシア兵(Karasev Viktor / Shutterstock.com)

2023年5月、ロシア・サンクトペテルブルクで行われた軍事パレードで、古いオートバイに乗って走るロシア兵(Karasev Viktor / Shutterstock.com)

ウクライナに対する全面戦争で失った1万5000両にのぼる装甲車両の補充に四苦八苦しているロシア軍は、突撃部隊に安価な民生車両をあてがうようになっている。最初に登場したのは中国製の全地形対応車(ATV)、いわゆる「ゴルフカート」だった。次に、中国やベラルーシから調達したらしいダートバイクが使われだした。

言うまでもなくこれらの車両は、とくに元の仕様のままではウクライナ側の大砲やミサイル、ドローン(無人機)による攻撃に対してあまりに弱い。事実、5月上旬には、オートバイに乗ったロシア軍のある突撃部隊が「こてんぱんにやられた」とウクライナ軍の第79独立空中強襲旅団が報告していた

そこでロシア軍は、これらの全地形対応車やバイクにも防護を施すようになっている。ウクライナ側が多用している自爆型のFPV(一人称視点)ドローンから車両や兵士を守るための、金網や金属製のケージ(囲い)のような簡易装甲だ。そうした「装甲オートバイ」は観察者たちの間で、終末もののSF映画『マッドマックス』シリーズに登場するオートバイになぞらえられている。

問題は容易に予想されるように、70馬力かそこらの全地形対応車や50馬力くらいのバイクはたいした装甲を付けられないという点だ。あまり付けすぎると、これらの車両の強みである機動性が損なわれてしまう。こうした点は100年前、第一次世界大戦中やそのあとに各国の軍隊が学んだことだった。ロシア軍は今後、それを身をもって学び直すことになるに違いない。

DIY装甲を取り付けたオートバイの写真や動画がソーシャルメディアに出回るようになったのは、4月に入ってからだった。1カ月後には、大きさや形状の異なるさまざまな装甲をまとったバイクが出現していた。サイドカーを備え、全体を金属製ケージで覆ったバイクや、さらにケージに偽装を施したバイクなどの写真が共有されている。

ロシア軍のオートバイや全地形対応車について、ウクライナのシンクタンクの防衛戦略センター(CDS)は「攻撃起点の陣地から、ウクライナ軍の防衛部隊と接する最前線までの間を素早く移動するために使われている」と説明している。部隊は最前線に到着すると、下車して徒歩で戦闘を行う。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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