欧州

2024.06.06 10:00

ロシア軍、東部チャシウヤールで消耗の罠にはまる 5月の人的損害は過去最悪に

Shutterstock.com

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ウクライナ東部ドンバス地方のロシア軍は今年2月、多大な損害を出した5カ月にわたる攻撃の末にアウジーウカを陥落させると、すぐに東部で新たな都市に狙いを定めた。かつて鉱工業で栄え、ロシアが2022年2月に戦争を拡大する前には1万2000人ほどが暮らしていたチャシウヤール市である。

チャシウヤールは、ロシアがすでに占領しているバフムートの西方の接触線にさらされているうえ、防御の役に立つ地形が市を南北に流れる運河くらいしかない(しかも渡河しやすい地点が2カ所ある)ので、攻撃を受けやすい。そして、市の中心部から運河を隔てて反対側にある最東端の通称「運河地区」は、とりわけ攻撃を受けやすい。

ウクライナに侵攻している50万人規模のロシア軍にとって、チャシウヤールを落とすのはそれほど難しくないはずだった。ところが、ロシア軍はここでもまた消耗の罠にはまっている。この正面のロシア軍部隊は少しずつ、物差しで測れる程度の前進を遂げてきたものの、その過程で人員を何千人も失っている。ウクライナ側の人的損耗ははるかに少ない。

ロシア軍がどのようにチャシウヤールを攻略しようとしているのかは明白だ。第200独立親衛自動車化狙撃旅団、第299空挺連隊、第11独立親衛空挺旅団などの部隊が、集中的な近接航空支援を受けながら運河地区を攻撃し、制圧する。その後、ここを足場として市中心部を直接攻撃する。運河地区に対する攻撃と並行して、チャシウヤールへの補給線に圧力をかけるため、市のすぐ北にあるカリニウカ村を攻撃する。

ロシア軍はこうした作戦で数カ月にわたり攻撃を続けてきたが、あまりうまくいっていない。最近、サーモバリック弾を発射できるTOS-1/TOS-2多連装ロケット砲も使い始めたが、現地の火力バランスを決定的に変えるには至っていない。4日現在、ウクライナ軍の第41独立機械化旅団、第241独立領土防衛旅団、独立大統領旅団(編集注:大統領の護衛を主任務とする陸軍隷下の機械化歩兵部隊)がチャシウヤール、運河地区、カリニウカを引き続き保持している。

ロシア軍はここ数日、カリニウカでウクライナ軍を一時押し込んだが、ウクライナ側は第200旅団から激しい砲撃を浴びながらも反撃し、押し戻した。

ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)は、かねて運河地区について悲観していた。3日の作戦状況評価でも、運河地区について「(ロシア軍の)前方部隊が側面の陣地を確保したので、近く占領されることになるだろう」と言及している。

だが、「側面の陣地」のひとつはカリニウカにあり、それはウクライナ軍の反撃で排除された。おそらくCDSがこの評価レポートを作成したあとの出来事だったので、評価には反映されていないのだろう。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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