断固たる保守主義から、情熱的な進歩主義まで、政治イデオロギーは、私たちのものの見方や、世界との関わり方を大きく左右する。政治的なアイデンティティは、さまざまな要因がクモの巣のごとく複雑に絡み合って形成される。そして私たちは、新しい体験や、自分を取り巻く問題を理解し適応するために、そのクモの巣を絶えず編み直す。
生涯を通じて政治的イデオロギーに影響を与える3つの要素について、これまでの研究からわかっていることを紹介しよう。
1. 遺伝的な素因
政治的信念や支持政党は、外部からの影響だけで決まるものではない。生まれながらに持つ生物学的な素因や、親から受け継いだ遺伝子もまた、政治的な傾向を決定づける上で大きな役割を果たしている。行動科学に関する学術誌『Current Opinion in Behavioral Sciences』で2020年に発表された研究は、双生児を対象とした調査などから、政治イデオロギーはおよそ40%が遺伝的に決まると結論づけた。人の遺伝子はどうやら、政治的なアイデンティティに広く影響を及ぼしており、自分とは違うタイプの人についてどう受け止め、どう反応するのか、政治の動きをどう見るのか、選挙で誰に投票するのかといったことに影響を与えているようなのだ。
興味深いことに、政治志向に対する遺伝的な影響は、一生を通じて自然に変化していく。米心理学会が発行する学術誌『Journal of Personality and Social Psychology』で2020年に発表された別の研究によると、政治志向に対する遺伝的影響は、思春期よりも、若年成人の時期の方が強いという。
生まれ持った先天的な性質と、のちに育まれた後天的な性質が、年を重ねるにつれて複雑な相互作用を起こし、政治に対する見方を形成していくようだ。そして思春期には、家族や仲間といった人たちと交わるなかで生まれる、共通の社会的コンテキストから受ける影響が強くなる模様だ。